研究課題/領域番号 |
23659122
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小渕 浩嗣 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (10304297)
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研究分担者 |
藤田 洋史 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20423288)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / エネルギー代謝 / 低分子化合物 / 酸化還元制御 / アミノレブリン酸 |
研究概要 |
ミトコンドリアは細胞の代謝活性の鍵となる監視機関であるだけでなく、増殖、分化、アポトーシスなど多彩な細胞活動に関与するオルガネラである。従って、ミトコンドリアの不足および機能の低下は、糖尿病や動脈硬化症などの生活習慣病、パーキンソン病などの神経変性疾患、老化に伴い筋肉の量や機能が失われる加齢性筋肉減弱症(sarcopenia)など、様々な疾患の発症と増悪に関連している。逆に、ミトコンドリアの量が多く、機能が保持された細胞では、種々の刺激に対する保護効果が高いとされる。また、ミトコンドリアのエネルギー代謝機能(脂肪酸酸化、酸化的リン酸化)を亢進させることで生活習慣病をはじめとした様々なミトコンドリア関連疾患の予防および改善に有効であると考えられている。ミトコンドリアの新生(増加)には、持続的な運動などの環境因子が重要であることは以前より知られるが、詳細なメカニズムは未解決な点が多い。この研究では運動などの環境因子に代わるミトコンドリア増加因子として、どのような化合物が効果的であるかを明らかにするとともに、ミトコンドリアの新たな機能を明らかにすることで、様々な疾患に有効な薬物の開発に貢献することを目的としている。 ミトコンドリアのエネルギー代謝など生体における酸素代謝にはヘムタンパク質と呼ばれる鉄ポルフィリン錯体(ヘム)を含むタンパク質が関与している。そのヘム合成には初期代謝物としてミトコンドリアで5-アミノレブリン酸が生成される。これは、細胞質で代謝されたのち、ミトコンドリアに輸送されてプロトポルフィリンIXに代謝され、最終的に鉄イオンが配位してヘムとなる。アミノレブリン酸は外から投与しても細胞内に取り込まれヘム合成に利用される。結果として、ヘムタンパク質合成の亢進とともにミトコンドリア量の増加とエネルギー代謝の向上が期待され、現在その有用性を精査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、様々な化合物および環境因子について細胞内のミトコンドリア新生に対する影響を検討している段階である。いくつか候補化合物は挙がっているが、それらの効果を様々な解析法により詳細に検討する必要が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内ミトコンドリア量を増加させる低分子生理活性物質もしくは環境因子についてスクリーニングし、効果が認められる化合物などに対してはさらに精査し、その有効性を分子生物学的手法により解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度からの繰越金が生じたが、これは化合物のスクリーニングを中心に研究を進めているため、試験する化合物を最小単位で購入したり、キャンペーン価格を利用することで生じた。テストした化合物の中に有用なものが明らかになれば、今後の研究の中で大量に購入する必要が出てくる。よって、繰越金を含めた研究費は、原則としてこれまでに得られた実験結果を含め、研究計画に沿った実験を進めるために使用する。但し、優れた成果が得られた場合もしくはそうでない場合においても、より発展的な研究につながるように種々の化合物を含む実験材料および方法などを再検討しつつ研究を推進し、その成果を発表する。
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