研究課題
社会的動物は集団を組織し、生存のための有益な情報(危険回避や報酬獲得など)を発信・受信する。逆に、有害行動が社会的に伝播され、問題となる場合もある(肥満、飲酒、喫煙など)。このような社会的伝達は動物にも認められ、その脳内機構が普遍的に存在すると考えられるが、その詳細は明らかでない。本研究は、危険回避行動や報酬獲得行動が10個体以下の中規模集団における相互影響の個体数依存性や行動特性依存性について調べ、さらにその神経機構を明らかとすることを目的とする。本年度は社会的環境下における回避行動および報酬獲得行動時の神経活動記録のため、長時間記録が可能な慢性植え込み電極を用いたが、解析できるニューロン数が少なく、特異的な反応を見出すことができなかった。テレメータ記録も試みたがSN比が悪く、有線記録よりも条件が悪かった。複数の動物が活動している社会的環境下では電極の保全をより厳格にしないと安定した記録は困難であり、さらなる技術改良が必要である。報酬獲得行動において、社会的環境の影響を検討した結果、孤立した環境で過食応答が発現しやすく、またうつ反応を示しやすいことが認められた。一方、報酬価値の影響は社会性のある環境のほうがより明確に認められた。回避行動の社会的影響が安全な環境では回避行動の減弱に作用し、危険な環境では増強に作用するという合目的的な機構があることをすでに明らかにしているが、報酬獲得行動においても、社会的環境のほうが病的な反応が発現しにくく、さらに報酬価値により鋭敏に反応するという適応的関係が認められた。社会的動物においては危険回避行動だけでなく報酬獲得行動も生存確率がより高くなるように適応的調節が営まれている可能性があることが示された。
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