研究課題/領域番号 |
23659127
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | バゾプレッシン / オキシトシン / 光感受性タンパク / 光遺伝学 / 遺伝子改変動物 |
研究概要 |
本研究では、光感受性タンパク(光興奮タンパク(チャネルロドプシン2)および光抑制タンパク(ハロロドプシン))を下垂体後葉ホルモンとして知られるバゾプレッシンおよびオキシトシンを産生する神経分泌ニューロンにトランスジェニック技術を用いて強制発現させることにより、下垂体後葉ホルモンの新たな機能を解明することを目的としている。本年度は、バゾプレッシン遺伝子にチャネルロドプシン2遺伝子とハロロドプシン遺伝子を連結した合成遺伝子を挿入した融合遺伝子を作製し、その融合遺伝子を用いてトランスジェニックラットの作出を行った。なお、チャネルロドプシン2遺伝子には改変緑色蛍光タンパク(eGFP)遺伝子を連結し、ハロロドプシン遺伝子には黄色蛍光タンパク(YFP)遺伝子を連結することで、それぞれの光感受性タンパク遺伝子発現をeGFPおよびYFPのそれぞれの蛍光タンパク遺伝子の発現で確認することができるように設計されている。本年度の結果としては、この融合遺伝子を持つファウンダーラットの4系統(雄2匹、雌2匹)が得られた。導入された融合遺伝子のコピー数は、1および3コピーであった。これらの系統では、外見上は正常に成長しており行動などには明かな異常は見られなかった。現在、本学動物研究センターでこれらのファウンダーラットの系統維持・繁殖のため飼育中でそれぞれのファウンダーラットからF1を得るために交配を行っているところである。今後、F1ラットの視床下部からバゾプレッシン産生ニューロンを酵素処理により単離して蛍光タンパクを指標に光感受性タンパクが発現しているかどうか、さらにホールセルパッチクランプ法を用いて光感受性タンパクが発現しているかどうかを確認する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していた通り、バゾプレッシン遺伝子にチャネルロドプシン2およびハロロドプシン遺伝子を挿入した融合遺伝子を作製し、その融合遺伝子を用いてトランスジェニックラットを作出することができた。オキシトシン遺伝子についてはまだ実施できていないものの同様の手法により今年度よりも効率よく実施できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
バゾプレッシン-チャネルロドプシン2-ハロロドプシン遺伝子が導入されたトランスジェニックラットのSPF化、飼育および系代繁殖を本学動物研究センター内で行う。耳介部皮膚から抽出したDNAを用いてバゾプレッシン-チャネルロドプシン2-ハロロドプシン融合遺伝子が導入されていることを確認後、ラットの視床下部視索上核からバゾプレッシン産生ニューロンを酵素処理により単離する。単離したニューロンからパッチクランプ法を用いて膜電流を記録し、光照射による電流変化を観察する。また、視床下部視索上核を含む脳スライス標本を作製し、パッチクランプ法を用いてシナプス入力を記録しながら光照射の影響を観察する。さらに、in vivoにおいて視床下部への光照射方法を確立し、血中バゾプレッシン濃度の測定と行動との相関を観察する。これらに平行してオキシトシン-チャネルロドプシン2-ハロロドプシン遺伝子を用いたトランスジェニックラットの作出を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
トランスジェニック動物を用いるため、実験動物(トランスジェニックラット)費、試薬費、検体検査料、研究支援施設利用料(含飼育費)を計上した。光照射に用いる光ファイバー等は実験毎に手作りで作製するため、実験用消耗品として計上した。トランスジェニックラットへの融合遺伝子導入判定のためPCR法をルーチンで実施する必要があるため試薬および実験用消耗品を計上した。また、本研究課題に関連する研究成果発表および情報収集のため関連学会に参加するための国内旅費を計上した。 実験動物費 400 千円 試薬費 300 千円 検体検査料 100 千円 研究支援施設使用料(含飼育費) 100 千円 実験用消耗品 300 千円 国内旅費 100 千円
|