研究課題/領域番号 |
23659132
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
増本 博司 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80423151)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | DNA変異源 / 化学物質 / 真菌類 / DNA変異源性試験法 |
研究概要 |
研究目的:出芽酵母を使ったDNA変異原性試験系を確立する。研究内容:DNA変異原性試験系用に作製した出芽酵母株(AMS酵母株)を用いて、いくつかの化学物質を用いて化学物質の変異原性テストに耐え得るかどうか、テストを行なった。この株は二つの特徴:DNA変異源となり得る化学物質の露曝によるDNA変異/染色体腕の欠損を酵母細胞のコロニーの色の変化で検出、化学物質の排出ポンプを破壊したことで、従来細胞に無害と考えられていた化学物質の細胞毒性を検出する、を兼ね備えている。本研究ではDNA損傷を引き起こすMethyl metanesulfateおよびヒドロキシ尿素を使って、AMS酵母株コロニーの色が変化することを確認した。さらにはRhodamine 6Gを用いて、化学物質の排出ポンプの破壊によって化学物質が細胞内に滞留し細胞毒性が生じることを、細胞のコロニー形成が起こらなくなることで確認した。 ニコチンアミド(別名:ビタミンB3)は細胞増殖に必須であるが、染色体構造の維持に必要なNAD+依存性ヒストンデアセチラーゼの阻害剤として機能する(Genes Cells 16, 467 (Apr, 2011))。通常の野性株ではニコチンアミドによるDNA損傷の検出は難しいが、AMS酵母株を使うことによって低濃度のニコチンアミドによるDNA障害能および細胞毒性を検出することができた。研究の意義:化学物質の持つ人体あるいは他の真核生物種への有害性を判断するためにも、真核生物を使った化学物質のDNA変異原性を測る試験系の開発が必要である研究の重要性:今回作製したAMS酵母株は従来、細胞毒性あるいはDNA変異源性が報告されていなかった化学物質に対してその毒性を検出することができる。これは従来のシステムでは検出できなかった化学物質の潜在的なDNA変異源性を検出できる試験系が開発できたことを意味する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文作製、特許申請に必要な実験データはほぼ揃ったため。また平成23年度に研究費の大半が繰り越した理由は、化学物質の変異源性を試験するための遺伝子組換え酵母株は既に作製しており、変異源となりうる化学物質等も筆者らの研究室には既に購入されており、新規に購入する必要がなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
論文および特許申請に必要な実験を完了する。特許申請の可否を所属機関と協議した後、その結果次第で特許申請を行なう。特許申請との兼ね合いではあるが、今年度中には論文投稿も行なう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究室に以前から存在する化学物質、試薬類を利用して遺伝子組換え酵母株や変異源アッセイ等を行なったため、平成23年度の研究予算はほとんど消化しなかった。本年度は未消化分の予算も含めて、下記の研究費の使用計画を立てている。試薬類および小額の実験機器類(50万円以下)の購入。様々な化学物質を使ったDNA変異原性試験系の実施のための技術補佐員および学生アルバイトの雇用費。我々の研究試験系の使用を広く研究者にアピールするための学会発表の参加費。
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