研究課題/領域番号 |
23659134
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
三枝 理博 金沢大学, 医学系, 准教授 (20296552)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | オレキシン / ナルコレプシー / AAV / 遺伝子治療 / DREADD / セロトニン / ノルアドレナリン / 睡眠・覚醒 |
研究概要 |
睡眠障害・ナルコレプシーは、オレキシン産生ニューロンの特異的な変性によって生じる。本年度はマウスモデル(既知の二つのオレキシン受容体を両方欠損したOX1R-/-;OX2R-/-マウス)を用い、オレキシンニューロンにより活性化されるとナルコレプシー様症状を抑制できる脳領域・ニューロンの同定を試みた。組換えAAVベクターの局所感染を用いて、OX1R-/-;OX2R-/-マウスの様々な脳領域にオレキシン受容体発現をレスキューし、ナルコレプシーの二つの特徴、覚醒の分断化(睡眠発作に対応)とカタプレキシー(情動性脱力発作)が改善される領域を検索した。またセロトニン作動性ニューロン選択的、およびノルアドレナリン作動生ニューロン選択的にオレキシン受容体を発現するAAVベクターの開発にも取り組んだ。 その結果、青班核ノルアドレナリン作動生ニューロンに選択的にオレキシン受容体発現をレスキューすると覚醒の分断化が有意に改善されたが、カタプレキシーの頻度には影響が見られないのに対し、背側逢線核セロトニン作動性ニューロン選択的にレスキューするとカタプレキシーがほぼ消失するが、覚醒の分断化は改善しないことを明らかにした。 これは、オレキシンニューロンによる覚醒の分断化(覚醒からノンレム睡眠への異常な移行)とカタプレキシー(覚醒中にレム睡眠の特徴である脱力が病的に生じる)の抑制において、それぞれで異なる下流神経回路がオレキシンニューロンの機能を仲介していることを意味する。ナルコレプシー発症のメカニズムはもちろん、健常者の睡眠・覚醒調節機構を理解する上でも意義のあるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
オレキシンニューロンの直接の下流でナルコレプシーを抑制する脳領域を特定しただけでなく、セロトニン作動性ニューロン選択的、ノルアドレナリン作動生ニューロン選択的にオレキシン受容体を発現するAAVベクターも既に開発し、両ニューロンタイプがそれぞれカタプレキシー、覚醒の分断化というナルコレプシー症状の異なる側面を抑制することを示した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、人工GPCRをAAVベクターで導入し、上述した背側逢線核セロトニン作動性ニューロンや青班核ノルアドレナリン作動生ニューロンを人工リガンド投与によって人工的に活性化することでナルコレプシーが抑制されるかを検討し、人工受容体-人工リガンドを用いた新たな遺伝子治療法の可能性について探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は予想以上に実験がスムーズに進んだため、想定していた様々な実験条件等を検討する必要がなくなり、次年度使用額が生じた。24年度に請求する研究費と併せ、実験計画を進めるための物品費・旅費等に使用する。
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