研究課題/領域番号 |
23659135
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山田 清文 名古屋大学, 医学部附属病院, 教授 (30303639)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 意思決定 / 薬物依存 / 動物モデル / 覚せい剤 / メタンフェタミン |
研究概要 |
現在、日本は第3次薬物乱用期と云われ、薬物乱用者の増加・低年齢化、薬物依存に関連した薬物事犯の増加などが大きな社会問題になっている。薬物依存患者の意思決定パターンは正常者と異なることが示唆されているが、薬物依存者の意思決定の障害が薬物乱用の原因であるか、あるいは薬物依存の結果として意思決定に障害が生じたのかは不明である。本研究では、(1)意思決定に対する依存性薬物の効果を評価することのできるラットを用いた行動試験法(小動物用ギャンブルテスト)を考案する。 (2)覚せい剤、麻薬、ニコチンなどの依存性薬物の意思決定に対する影響を明らかにする。 (3)c-Fosマッピングと逆行性色素などを用いて、意思決定に関わる神経回路を同定する。 (4)同神経回路の神経活性に対する依存性薬物の効果を調べる。 本年度は、上記のうち、主に(1)および(2)を実施し、以下の研究成果を得た。(1)意思決定に対する依存性薬物の効果を評価することのできるラットを用いた行動試験法の開発: ヒトの意思決定の検査に用いられているIowa gambling task課題を参考にして、8方向放射状迷路を用いた小動物用ギャンブルテストを開発に成功した。正常なWistar系雄ラットの場合、リスクの程度に依存してハイリスク・ハイリターン(H-H)アームを選択する割合が減少し、ローリスク・ローリターン(L-L)アームを選択する割合が増加した。(2)依存性薬物が意思決定に及ぼす影響: 覚せい剤(メタンフェタミン)を連続投与したラットではコントール群に比較してH-Hアームを選択する割合が統計上有意に増加し、覚せい剤が意思決定を障害することが示唆された。 これらの研究成果をまとめ、平成23年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会のシンポジウムで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りに研究は順調に進んでいる。特に、新しい意思決定の障害を評価することが可能な行動試験が開発できたことから、当初の研究計画に従って、平成24年度には意思決定の神経回路を解析するための研究を実施することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、前述した研究計画のうち、主に(2)、(3)、(4)の実験を行う。(2)意思決定に及ぼすニコチンの効果:正常動物および覚せい剤処置したラットの意思決定に及ぼすニコチンの影響について、前年度に確立した小動物用ギャンブルテストを用いて解析する。(3)意思決定に関わる神経回路の同定:c-Fosマッピングなどの手法を応用して正常動物の意思決定にかかわる脳神経核・神経回路を調べる。(4)意思決定回路の神経活動に対する依存性薬物の影響:覚せい剤処置により意思決定に障害が生じたラットを用いて、小動物用ギャンブルテストの実施に伴うc-Fos発現の変化を調べる。さらに、得られた結果を取りまとめ学会発表するとともに、国際専門学術雑誌への論文投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究経費として、行動試験に用いる動物代、免疫染色に必要な抗体、その他の実験用試薬などの消耗品費、実験補助者に対する謝金および学会発表のために旅費に使用する。
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