研究課題
挑戦的萌芽研究
【内容】本研究の目的は、脂質転移蛋白Stard10に注目して肝臓における脂質代謝の制御と破綻の分子機構を明らかにし、新たな治療戦略の分子基盤を構築することである。H23年度は、Stard10ノックアウトマウス(Stard10 KO)の肝臓においてコレステロールおよび中性脂肪の含有量が野生型マウス(WT)に比較して有意に低く、高脂肪食の負荷に対して脂肪肝になりにくいことを見出した。平成24年度は、さらに詳細な網羅的メタボローム解析と胆汁酸解析を行い、胆汁酸の腸管循環を検討した。その結果、以下の研究成果を得た。(1)マウス肝臓細胞においてStard10は、肝細胞膜、毛細胆管側膜、脂肪滴膜とその近傍の小胞体周囲など、胆汁酸分泌やVLDL産生に重要な場所に局在していた。(2)Stard10 KOではWTに比較して胆汁酸および脂肪酸の代謝産物に著名な変化が認められ、また、関連遺伝子の発現レベルも同様に変化していた。(3)Stard10と胆汁酸取り込みトランスポーター(ASBT)は、小腸粘膜上皮細胞膜に共局在しており、Stard10 KOではASBTの発現が著名に低下していた。(4)上記(1)~(3)から予測された通り、Stard10 KOでは糞便中に排泄される胆汁酸の量がWTに比較して有意に高かった。Stard10 KOにおける胆汁酸消費の亢進は、肝臓に脂質が蓄積しにくい理由の一つと考えられた。(5)Stard10がPPAR-α制御遺伝子の一部、すなわち胆汁酸代謝や脂肪酸代謝に関わる遺伝子の転写制御に関わっているという重要な知見を得た。(6) 肝臓においてStarD10と複合体を形成する蛋白として、リポ蛋白生成および脂質代謝調節に関連する蛋白を同定した。【意義・重要性】Stard10 は、胆汁酸代謝および脂肪酸代謝に関連したPPAR-α制御遺伝子の発現調節を介して脂質代謝の制御に関与していることが明らかとなった。
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