研究概要 |
皮膚や骨髄などの成人ヒト間葉系組織あるいは培養間葉系細胞に多能性を有する新たな幹細胞 Multilineage- differentiating Stress Enduring cell (Muse細胞)を見出した(Kuroda et al., PNAS, 2010)。この細胞はNanog, Oct3/4, Sox2などの多能性幹細胞マーカーを発現し、1細胞から3胚葉性の細胞に分化する能力を有し、自己複製能を持つ。ヒトES細胞のマーカーSSEA-3を発現し、このマーカーを用いることによりヒト線維芽細胞, 骨髄間葉系細胞の培養細胞の他に、新鮮骨髄液、皮膚などの生体組織からも直接分離可能である。また通常の成人ヒトの組織に存在し、腫瘍性がない。 本研究では多能性を有するが腫瘍性の無いMuse細胞の特性を骨髄移植に活用することを目的とし、患者本人やドナーから簡便に採取できる皮膚などに存在するMuse細胞から造血系細胞への分化を模索する。 本年度はX線照射を行った免疫不全マウスSCIDマウスへの移植を行った。lentivirus-GFPでラベルされたヒト皮膚線維芽細胞由来のMuse細胞をマウスの尾静脈から投与した。投与した細胞数は1万細胞とした。6ヶ月後にGCSFを投与して末梢血を回収しFACSで解析した結果、ごく少数のヒトGFP+細胞がGFP陽性細胞におけるpacific blue-CD45(白血球系マーカー)、PE-Cy7-CD2(T細胞リンパ球系マーカー)、APC-CD19(B細胞系)を発現していることが確認された。また骨髄内を組織学的に検討した結果、GFP陽性のMuse細胞が造血系細胞マーカー陽性の細胞として分化して骨髄内に生着していることが確認された。
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