iPS細胞の臨床応用に向けて、樹立効率やスピードの改善が求められている。iPS細胞への誘導が開始された初期段階では、まず細胞の間葉―上皮転換が誘導されるが、この過程はTGF-βシグナルによって負に制御されているため、TGF-βシグナルを抑制すると樹立効率を改善することが報告されている。本研究では、TGF-βシグナルに注目し、間葉上皮転換に関与する分子群の詳細な検討により、迅速かつ確実なiPS細胞を誘導する新規技術の開発を目指している。 そこで、TGF-βシグナル系のコンディショナルノックアウトマウスとCAG-Creマウスを交配させたマウスよりMEF細胞を樹立し、Tet-on システムを利用したiPS細胞の誘導系を樹立した。Tet-on offシステムを利用して、MEF-iPS細胞間の変化を可能とするためである。樹立できたtet-on iPS細胞の遺伝子変動について検討を行ったが、コロニー間のばらつきが大きいことが問題点として挙がっている。今後はiPS細胞の継代を繰り返すことにより、より安定な細胞へと変化させてさらに検討を行う必要がある。
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