研究課題/領域番号 |
23659149
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
篠原 正浩 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60345733)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 脂肪 / 筋肉 / メタボリックシンドローム / PI3K |
研究概要 |
本申請では、大理石骨病を発症する破骨細胞特異的なノックアウトマウスを用いて破骨細胞による脂肪組織および筋組織の形成制御メカニズムに焦点を絞り、メタボリックシンドロームにおける破骨細胞の機能解析を実施する目的で、破骨細胞特異的PI3Kノックアウトマウスの表現型解析を実施した。破骨細胞特異的に発現するカテプシンK遺伝子のプロモーターによりCreリコンビナーゼを発現するCreマウスを用い、クラスIA型PI3Kの制御サブユニットp85αとp85βを破骨細胞特異的にノックアウトしたマウスであり、破骨細胞の吸収活性に異常があるため重度の大理石骨病を発症する。生後40週齢のマウスの体重を測定したところ、野生型マウスでは加齢性の肥満を発症するのに対して、ノックアウトマウスでは有意に体重の増加および肥満の抑制が認められた。野生型マウスと比較して、ノックアウトマウスの体脂肪量・体脂肪率は著しく低下している一方で、筋量の増加が認められた。通常時の血糖値に有意な差は認められなかった。しかし、糖負荷試験を行ったところ、40週齢の野生型マウスでは8週齢のマウスと比較して経時的な減少が抑制されるのに対して、ノックアウトマウスでは8週齢のマウスと同様な経時的な減少が認められた。この結果は、加齢に伴って変化する血糖値制御が、ノックアウトマウスでは若齢の時と同様に保たれていることを示している。 ノックアウトマウスの所見から、破骨細胞で発現しているPI3Kは脂肪細胞分化の抑制・筋細胞分化の亢進を担っていることが予想されたため、in vitro破骨細胞培養上清を脂肪細胞および筋細胞分化系に添加した際の影響について解析を行った。この結果、ノックアウト破骨細胞の培養上清を添加した際に、筋細胞分化が促進されることを見出した。現在、脂肪細胞に対する影響および筋細胞促進因子の精製・同定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画では、ノックアウトマウスにおけるメタボリックシンドロームに関連した表現型を解析することを予定していた。本年度の研究成果により破骨細胞が脂肪組織・筋組織の形成制御を介して、加齢に伴う糖代謝異常に関与していることを示すことができたほか、ノックアウト破骨細胞の培養上清に筋細胞分化促進因子が含まれている知見が得られたため、おおむね順調に研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、ノックアウト破骨細胞が産生する筋細胞分化促進因子の精製・同定を実施する。また、脂肪細胞分化に対する培養上清の影響を解析し、何らかの影響が認められた場合、その因子の同定を試みる。また、同定された因子をマウスに投与した際の、糖代謝へ及ぼす影響について確認を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
破骨細胞分泌因子の同定に必要な細胞培養用試薬、因子の精製・同定・機能解析に必要な試薬類を購入する予定である。また、実験用マウスの購入やノックアウトマウスの管理維持費も必要となる。
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