本申請では、大理石骨病を発症する破骨細胞特異的なノックアウトマウスを用いて破骨細胞による脂肪組織および筋組織の形成制御メカニズムの解明に焦点を絞り、メタボリックシンドロームにおける破骨細胞の機能解析を目的とした。 破骨細胞特異的ノックアウトマウスは、破骨細胞による骨吸収に異常をきたすため重度の大理石骨病を発症する。8週齢のマウスでは野生型とノックアウトマウスの体重に差はほとんど認められないが、40週齢のマウスではノックアウトマウスの体重が野生型と比較して約50%の体重であることを見出した。様々な組織・臓器の重量を測定したところ、ノックアウトマウスでは肝臓および生殖器周囲、皮下、内蔵の脂肪重量が野生型と比較して低下していた。また、ノックアウトマウスに高脂肪食負荷をかけた場合、野生型マウスは体重が増加し、体脂肪率が上昇するのに対して、ノックアウトマウスでは体重増加ならびに体脂肪率の増加は認められなかった。この結果は、破骨細胞の機能不全が脂肪蓄積と関連していることを示唆している。 破骨細胞と脂肪蓄積とを連関させる分子の同定を試みるため、ノックアウトマウス由来の破骨細胞と野生型マウス由来の破骨細胞を用いて網羅的な遺伝子発現解析を実施中であり、破骨細胞による脂肪蓄積メカニズムの解明に向けた基盤を構築した。 本研究により、破骨細胞は肥満形成に対して正に働くことが明らかとなり、骨吸収の抑制は肥満発症の抑制につながりうることを示した。本研究成果は、将来的なメタボリックシンドロームの新たな治療戦略につながることが期待される。
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