研究課題
本研究は、Cre 依存的に遺伝子や RNAi を発現誘導できるウィルスベクターを開発し、Cre トランス ジェニックマウスに導入する事で、in vivoでの分子機能解析を格段に迅速化し、Bリンパ球の分化の解析に応用する事を目指す。系の有効性を培養細胞系で検証するためにレトロウィルスベクターにGFP及びRFPを2種類のloxPサイトを組み合わせ逆向きに配置したベクター(pFB-loxp-GFP-miR-RFP)を作製した。RFPの下流にはmiR用の配列を挿入できるカセットを配置している。 同時に、in vivoでのBリンパ球解析系に用いるcreマウスとして、抗体遺伝子の組み換えと体細胞突然変異に必須のAicda遺伝子のコード領域にcreを導入した190kbのゲノム DNAトランスジェニックマウスを検討した。その結果、胚中心B細胞や腸管の形質細胞では、AID発現及びcre発現が強力に誘導された結果、計画で用いるのと同様の仕組みのloxPサイトを持つノックイン型のCreレポーターが不可逆的に組み換えを起こし、ほぼ100%近く標識される事を確認した。また、予想外な結果として末梢のTリンパ球でもメモリータイプのCD4陽性Tリンパ球の一部にcreを発現する細胞が居る事を認めた。そのTリンパ球はインターロイキン10とインターフェロン-γを産生する特殊なサブセットのTリンパ球であり、若年マウスにおいてはCD4陽性T細胞の1-2パーセントを占めるに過ぎないがマウスの加齢とともに上昇し、最高25パーセントにも達する事がわかった。この新たに同定したTリンパ球サブセットが免疫の老化に係る特殊なメモリー型T細胞サブセットと関連する事が表面抗原の発現から示唆された。このようなT細胞集団の存在はこれまで知られて居らず、本計画で構築するシステムによる解析対照として重要である。
3: やや遅れている
レトロウィルスベクターでの蛍光タンパク質の発現が微弱であった。想定外のpolyA配列の存在を使用したGFPカセット下流に認めたためそれを除去するなど構築の試行錯誤が必要であった。複雑な構築な上に転写方向逆向きに配置した長いRFP配列が高発現に不利な可能性がある。肉眼による検定のみならずPCRを含めた検定を行って行く必要が有った。
23年度までに構築したretroウィルスベースのベクターでのシステム検定を蛍光の確認のみならずPCRを用いた組換え確認を含めて行う事とし、その検討を進めるとともに、更に当初目標としていたレンチウィルスを用いた構築に移行を行い、in vitroの系でのmiRによる阻害効率の検定を行う。また、同時にin vitro実験系を確立するために、当初の予定通りAicda-creマウスリンパ球の免疫不全マウスへの移入実験とその後の免疫応答の解析系を確立させる。
レトロウィルスベクターを用いた系の原理的な検証をまず行う予定であったがこれに手間取ったことで、レンチウィルスの系の導入をのばしていた。そのためその導入と運用に必要な関連費用を次年度に使用する事とした。具体的には市販のレンチウィルス作製用キットとして50万円、また関連のオリゴ核酸合成において20万円、in vitroの検定用に用いる培養用試薬血清等に20万円その他関連の消耗品で次年度使用する100万円に相当する。同時に元来の計画通りin vivo系を整備するためにマウスを使用する費用等、当初から予定した予算はそのまま使用する予定である。
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