研究課題
シグナルペプチドを持たないタンパク質(リーダーレスタンパク質)が、古典的分泌経路と異なる経路で細胞外に分泌されることが報告されているが、その分子機構は明らかではない。リーダーレスタンパク質は、細胞の内外で異なる機能を持つことで、より複雑な作用を可能にしている。我々は、細胞質プロテアーゼ、nardilysin (NRDc)がリーダーレスタンパク質のひとつであり、細胞表面で膜タンパク質の細胞外ドメインシェディングを増強すること、また核内で転写調節に関わっていることを明らかにした。本研究では、NRDcをモデルとしてリーダーレスタンパク質の非古典的分泌機序の解明および、分子局在に応じた多機能性と、その生体における意義を明らかにすることを最終目的とし、研究を進める。 具体的には申請期間の2年間で以下を達成する。1. NRDc分泌を誘導するシグナルを明らかにし、免疫電顕レベルで分子局在部位を明らかにすること、2. 非古典的分泌経路との関連が示唆されている翻訳後修飾、あるいは既知分子の関与の有無を明らかにすること、3.NRDc分泌を担う分子のランダムスクリーニング(ジーントラップ法)の系を確立すること。 平成23年度には、COS7やマウス胎児由来線維芽細胞(MEF)のみならず、ラット初代心筋細胞、マウス初代褐色脂肪前駆細胞などでもNRDcが分泌されることを確認した。特に、フォルスコリンなどでPKAを活性化させると、NRDc分泌が誘導されることが明らかになった。またNRDcの分泌は、非古典的分泌経路に重要と考えられていたcaspase-1の活性には依存しないことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、NRDcをモデルとしてリーダーレスタンパク質の非古典的分泌機序の解明および、分子局在に応じた多機能性と、その生体における意義を明らかにすることを最終目的とし、研究を進める。 具体的に目的として掲げた、1. NRDc分泌を誘導するシグナルを明らかにし、免疫電顕レベルで分子局在部位を明らかにすること、2. 非古典的分泌経路との関連が示唆されている翻訳後修飾、あるいは既知分子の関与の有無を明らかにすること、3.NRDc分泌を担う分子のランダムスクリーニング(ジーントラップ法)の系を確立すること、のうち、1. の分泌誘導シグナルの解明、2. の既知分子との関連などについて、成果が得られており、実験計画はおおむね順調に進展しているものと考える。
申請時に以下の目的を掲げた。❶. NRDcの分泌検出アッセイの確立および、分泌誘導シグナルを明らかにすること、❷. 免疫電顕での検出方法を確立し、分子局在を電顕レベルで明らかにすること、❸. 非古典的分泌経路との関連が示唆されている既知分子の関与を明らかにすること、❹. NRDc分泌との関連が推測される翻訳後修飾(リン酸化、アセチル化、イソプレニル化など)の意義の検討、❺. NRDc, IDEの非分泌型・非核移行型変異体の探索、❻. ランダムスクリーニング(ジーントラップ法)の系を確立すること。(1)の成果で、NRDc分泌がPKA活性化に伴い亢進することがわかったため、NRDc自身がPKAによってリン酸化をうけるかどうか、さらに分泌がそのリン酸化に依存しているかどうかを明らかにする((4)、(5))。また現在確立できつつある(2)についても、さらに進めていく。
当初の予定通り、実験に必要な試薬やプラスチック器具などの消耗品の購入、成果発表(論文投稿費、学会発表のための出張費)、マウス飼育費用などに使用予定である。50万円以上の備品を購入する予定はない。
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J Biol Chem
巻: 287 ページ: 10089-98
doi:10.1074/jbc.M111.313965
EMBO Mol Med
巻: in press ページ: in press
doi: 10.1002/emmm.201200216