研究課題
シグナルペプチドを持たないタンパク質(リーダーレスタンパク質)が、古典的分泌経路と異なる経路で細胞外に分泌されることが報告されているが、その分子機構は明らかではない。リーダーレスタンパク質は、細胞の内外で異なる機能を持つことで、より複雑な作用を可能にしている。我々は、細胞質プロテアーゼ、nardilysin (NRDc)がリーダーレスタンパク質のひとつであり、細胞表面で膜タンパク質の細胞外ドメインシェディングを増強すること、また核内で転写調節に関わっていることを明らかにした。本研究では、NRDcをモデルとしてリーダーレスタンパク質の非古典的分泌機序の解明および、分子局在に応じた多機能性と、その生体における意義を明らかにすることを最終目的とし、具体的には以下の3点を目的として研究を進めた。1. NRDc分泌を誘導するシグナルを明らかにすること、2. 非古典的分泌経路との関連が示唆されている翻訳後修飾、あるいは既知分子の関与の有無を明らかにすること、3.NRDc分泌を担う分子のランダムスクリーニング(ジーントラップ法)の系を確立すること。我々は、COS7やマウス胎児由来線維芽細胞(MEF)のみならず、ラット初代心筋細胞、マウス初代褐色脂肪前駆細胞などでもNRDcが分泌されることを確認した。特に、フォルスコリンなどでPKAを活性化させると、NRDc分泌が強く誘導されることを明らかにした。この結果から、当初は予定していなかったが、NRDc自身がリン酸化されるかどうか、リン酸化が分泌を制御していないかどうか、について検討し、NRDcが10カ所以上でリン酸化されていること、さらに、同リン酸化が分泌に重要な働きをしていることを明らかにできた。一方NRDcの分泌は、非古典的分泌経路に重要と考えられていたcaspase-1の活性には依存しないことがわかった。
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EMBO Mol Med
巻: 4 ページ: 396-411
10.1002/emmm.201200216