研究課題
① 実験当初は分離ラットランゲルハンス島に遺伝子導入を試みたが、(A)導入効率等が低く、また(B)ラットなどの齧歯類はインスリン遺伝子が2種類存在することから、明確な結果を導き出しにくい状況であった。② Flatt等のグループにより、ブドウ糖応答性を有するヒトインスリン産生細胞株が樹立された(1.1B4 cells)ので、この細胞を入手し、ヒトインスリンmRNAの5’-非翻訳領域を蛋白質の不安定化配列を含むレポーター遺伝子に連結したプラスミドを作製し導入実験を行ったところ、遺伝子導入効率も高く、ブドウ糖感受性translational controlを再現することに成功した。③ ヒトインスリンmRNAの5’-非翻訳領域の種々の断片を蛋白質の不安定化配列を含むレポーター遺伝子に連結したプラスミドを作製し、ヒトインスリン産生細胞1.1B4に導入して短時間のブドウ糖刺激を行うと、5’非翻訳領域全部が含まれていたときには認められたブドウ糖感受性の翻訳調節が翻訳開始メチオニン近傍の「GTCCTTCTG」の一部が欠失すると失われることが明らかになった。④ ヒトインスリンmRNAで明らかになったブドウ糖感受性翻訳調節領域は、チンパンジーインスリン遺伝子では完全に一致していた。また、ラット、マウス、モルモット、ブタ、ウシ、ニワトリ、ヒョウガエル、ゼブラフィッシュのインスリンmRNAとも相同性が高く、「NYNSYYNR」がコンセンサス配列と予想された。⑤ cis配列が明らかになったので、今後この配列に結合する蛋白質を明らかにし、ブドウ糖感受性邦訳調節の全貌を明らかにする道が拓けた。
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