研究概要 |
ストレスで活性化される転写因子ATF-7の標的遺伝子を探索するために、マウスのマクロファージとMEFを材料に用い、ATF-7抗体を使ってChIP-on-ChIPを行った。この結果、マクロファージとMEF において、ATF-7がプロモーター領域に結合していて、マクロファージではヒストンH3K9のジメチル化の程度と相関が高いことが明らかになった。MEFにおける結合部位はCREコンセンサス配列そのもので有ったが、マクロファージではCRE配列とは大きく異なっていた。このことから、マクロファージでは何らかの因子が結合して、認識配列がCRE配列と異なっている可能性がある。また、ATF-7遺伝子欠損細胞ではマクロファージとMEFともに結合がほとんど見られないことから、この結合はATF-7特異的であることが証明された。 マウスの雄親を低蛋白質の餌で飼育すると、通常の餌で飼育した場合と比較して、子供の肝臓でのコレステロール生合成系の遺伝子発現が上昇することが報告された(B, Carone 他、 Cell, 143, 1084, 2010)。そこで、この実験系におけるATF-7の関わりを検討するために、野生型の雄とATF-7 KOの雄で子供の肝臓での遺伝子発現に違いが有るかどうかを比較した。その結果、野生型で見られる子供の肝臓でのコレステロール生合成系の遺伝子発現上昇がATF-7 KOの雄では全く見られない事が分かった。以上から、雄親の餌の違いを雄の精子を通して子供に伝える機構にATF-7が関与していることが明らかになった。
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