腎機能の要は糸球体ポドサイトのスリット膜の濾過機能にある。成体ではポドサイトは細胞分裂することはないとされ、腎機能が生涯正常に保たれる理由はポドサイトのスリット膜の維持・再生にあると考えられるに至っている。しかし、スリット膜の濾過機能の椎持・再生の機構はほとんど不明である。私達は、細胞極性タンパク質aPKCのpodocyte特異的conditional KO miceが、巣状糸球体硬化症を発症する事を見いだし、その原因がaPKC-PAR極性複合体がスリット膜構成タンパク質の中でも最も重要であると考えられるNephrinに直接結合する事が原因であることを示唆する結果を得ている。これらの結果を踏まえ、私たちは、糸球体の機能維持の過程において、Nephrin分子の動態が重要であると同時に、aPKCやPAR3複合体がその制御に関わるとの仮説を立てた。本研究においては、この仮説の検証の第一段階として、Nephrinの動態をvitroとvivoで精査することを目的とした。 上皮系培養細胞こネフリンを発現させた人工ポドサイト、及び単離糸球体を用いて、ビオチンによる細胞膜表層のNephrin分子を標識することにより、その合成・exocytosis・膜への発現・endocytosis・分解、という一連の過程を解析した。その結果、いずれの系においても、Nephrin分子が極めて早い速度でexocytosisとendocytosisされている事を始めて見いだした。 さらに、この系を用いて、分子機構の解析を進め、PAR3複合体の構成員であるaPKCが、exocytosisの過程に大きく関与している事を突きとめた。これらの知見を元に、aPKCのpodocyte特異的conditional KO miceの組織異常を詳細に解析した結果、exocytosisの異常を示す証拠を得た。 これらの結果は、糸球体の機能維持におけるNephrinのexocytosisの死活的な重要性を示すと同時に、そこプロセスにaPKCが関わる事を示している。
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