研究課題/領域番号 |
23659176
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
中島 利博 東京医科大学, 医学部, 教授 (90260752)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 線維化 / 小胞体関連分解 / 関節リウマチ / 滑膜細胞 / シノビオリン / ンディショナルノックアウトマウス |
研究概要 |
関節リウマチは慢性炎症を基礎とする代表的疾患の1つであり、さらに、多関節において多段階の病的プロセスが進行することにより、時空間的に多様な病態を呈する。われわれはリウマチ滑膜細胞に過剰発現する分子として小胞体に存在するE3ユビキチン化酵素シノビオリンを発見した。シノビオリンは遺伝子改変動物を用いた研究により、少なくともマウスにおいては関節症発症の必要十分因子であることが証明されていた。また、関節リウマチの新薬である抗TNFα製剤の感受性を決定するバイオマーカーの可能性も示されている。さらに最近、シノビオリンが肝線維化モデルにおいてに重要な役割を示すことを明らかとし、これまで全く異なる病態と考えられていた両疾患に共通の発症機序が存在することを発見した。一方で、シノビオリンの完全欠損マウスは胎生期において致死であることも明らかとなっていた。したがって、これまで成獣における同分子の生理機能の解析、並びに関節症/線維化における分子病態を明らかとすることが不可能であった。そこで、本研究事業により、同分子のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、これらの点を明らかにすることを目的とした。その結果、シノビオリンのコンディショナルノックアウトマウスは胎生致死でのみならず、出生後に同遺伝子をノックアウトした場合でも致死であることを発見した。さらに、その過程で線維化・慢性炎症に非常に密接に関与することが示されている(論文準備中)。現在、その恒常性維持にシノビオリンが必要と考えられる関節などの臓器特異的なコンディショナルノックアウトマウスの解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のようにシノビオリンの機能制御は関節リウマチのみならず、線維化・慢性炎症を基盤とする疾患の創薬標的であることは明白であろう。われわれの有するシノビオリン抑制剤がマウスにおける関節炎モデルに有効であることを証明した(論文投稿中)。さらに、本テーマは橋渡し研究として米国のユビキチンに特化した創薬系ベンチャー プロジェンラ社との創薬開発プロジェクトへと進展していることより、(2)と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
syno-/-が胎生致死となるため、われわれが作成した組織特異的なシノビオリン遺伝子コンディショナル欠損マウスを用いることにより、シノビオリン遺伝子floxマウスと標的とする臓器でCreを発現するトランスジェニックマウスを掛け合わせることで、胎生致死を逃れて生存し、標的組織特異的にシノビオリンが発現しないマウスを作製することができ、シノビオリンが発現しない状態での標的臓器におけるシノビオリンの機能を検討することができる。さらに、これらの動物より得られた細胞を用い線維化関連分子シグナルを解析する。さらに、われわれの有するシノビオリンの選択的ユビキチン化阻害剤が他の線維化モデルマウスの病態発症に対してどのような効果を有するかを検討する。その結果、シノビオリンの制御が線維化の治療につながるかを動物レベルで検証できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費については、動物実験使用試薬等、化合物合成費用、プラスチック器具、実験動物購入費(遺伝子改変マウスの繁殖維持に用いる野生型マウスおよび線維化モデルマウスの作成に用いる野生型マウス)に使用する。また、旅費としては、研究に関連する国内外への学会の参加、国内での研究打ち合わせに使用する。その他、事務連絡や試料の受け渡しに必要な切手、電話、宅急便費や、論文別刷り等の印刷費、文献複写費、学会参加費、英文校閲費、論文投稿料等に使用する。
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