研究課題/領域番号 |
23659180
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馬淵 昭彦 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80312312)
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研究分担者 |
宮川 卓 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20512263)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ゲノム医学 |
研究概要 |
ヒトゲノムプロジェクト、HapMapプロジェクトにより、ヒトゲノムに存在するSNPが数多く同定され、また、ヒトゲノム構造多型コンソーシアムをはじめとした多くの国際共同研究により、CNV(コピー数多型)が同定されてきた。しかしながら、その多くはゲノム上の大まかな領域の検出にとどまり、CNVの存在の実験レベルの確認や具体的な切断点の情報に欠く等の問題がある。また、均衡型構造変化である逆位は、DNAチップによる検出が困難でありまたその詳細な地図は存在していないのが現状である。本研究では、特に逆位、染色体内・染色体外転座等の均衡型構造多型・変異が生じている部分の網羅的検出とその切断点の同定を目指して、その方法論を確立すること、及び日本人検体を用いてその均衡型構造多型・変異地図を作成することが本研究の目的である。 このため、複数検体を長鎖インサートのメイトペアライブラリを作成、次世代シークエンス法でリードすることで、網羅的な均衡型構造多型・変異を同定する。具体的には、ゲノムDNAをPicoGreeenで濃度調整後、ウオーターシェアーを2種類の長さ(3 kb、8 kb)で均等に切断、DNA Blunting Kitにより切断片を平滑化、3’端がCAGCAGで一部にビオチン標識されたインターナルアダプターをT4 DNA Ligaseでライゲーションした後、DNAを環状化した。この環状DNAをEcoP15Iで切断すると中央にアダプターが、両端にペアとなった25-27塩基のターゲット部位を含むDNA断片が得られる。この後、ビオチンタグによりDNAを濃縮し、アダプターを付加し、次世代シークエンス法による塩基配列の決定を行う。当研究室には昨年末に次世代型シークエンサが導入されたばかりであり、現在操作等の試行中である。このため当該年度は、試料の作成にとどまった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究室への次世代型シークエンサの導入が若干遅れ、また実験等に習熟しているスタッフの不足により、本研究の中核である、均衡型構造多型・変異検出のための多検体同時解析システムの構築に遅れが生じている。昨年末に、次世代シークエンサを導入、現在機器の調整を行っている段階であるが、早急に環境を整備して研究を遂行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
複数検体を長鎖インサートのメイトペアライブラリを作成、次世代シークエンス法でリードすることで、網羅的な均衡型構造多型・変異を同定する。具体的には、ゲノムDNAをPicoGreeenで濃度調整後、ウオーターシェアーを2種類の長さ(3 kb、8 kb)で均等に切断、DNA Blunting Kitにより切断片を平滑化する。3’端がCAGCAGで一部にビオチン標識されたインターナルアダプターをT4 DNA Ligaseでライゲーションした後、DNAを環状化する。この環状DNAをEcoP15Iで切断(もしくは別の方法で)すると中央にアダプターが、両端にペアとなった25-27塩基のターゲット部位を含むDNA断片が得られる。 申請書では次世代シークエンサとして、Life Technologies/SOLiD™ 4 と記載したが、当研究室が導入した機器は、同社の ION Torrentであった。これは、シークエンス精度は同程度に高いが解析速度で劣る。ビオチンタグによりDNAを濃縮し、アダプターを付加し、次世代シークエンス法による塩基配列の決定を行う。 データ解析は、均衡型構造多型・変異検出専用プログラムで実施する。まず、タグ配列等を除去し、リピートマスカーによりターゲット部位(1、2とする)のリピートをマスク、ターゲット部位1をリファレンスゲノムへマッピングさせる。マッピング可能な場合、その周囲配列(3 kb断片では片側5 kb、8 kb断片では片側10 kb)を優先しマッピングするが、マッピング不可の場合、更に外側に、最終的には全ゲノムに対してマッピングさせる。ターゲット部位の方向、サイズなどから、挿入、欠失、逆位、染色体内転座、染色体外転座を判断、得られた情報を検体毎に物理的位置に応じてスコア化して解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
均衡型構造多型・変異検出のための多検体同時解析システムの構築」では、網羅的な均衡型構造多型・変異の検出を試みるため、次世代シークエンサーによる解析が必須である。ただ、全ゲノムシークエンスと異なり、コンティグを作成する必要は無く、切断点を含むメイトペア部分の配列決定のみで済むため、検体の多重化が可能であり本方法の効率は非常に高いと考えられる。次世代シークエンサーを用いた配列決定は1回あたりの費用が非常に高く高額な消耗品を予定していた。しかし、昨年度は、次世代シークエンサーの導入が遅れたため、実際の費用はかからず、次年度に持ち越した。次年度は、次世代シークエンサーによる配列決定を複数回予定しており、当該年度は、高額の研究費を予定している。
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