研究概要 |
マウス新生仔F1線維芽細胞から8クローンのiPS細胞(iPSC)を作製した。1クローンはセンダイウイルス(4ファクター:Sox, Klf4, Oct, Myc)で、3クローンはセンダイウイルス(3ファクター:Sox, Klf4, Oct)で、4クローンはレトロウイルス(4ファクター:Sox, Klf4, Oct, Myc)で樹立した。線維芽細胞、未分化iPSC、レチノイン酸処理にて分化誘導したiPSCのゲノム中の28ヵ所の刷り込みDMRのメチル化についてMassARRAYを用いて定量的に解析した。未分化iPSCを線維芽細胞と比べたところ、4クローン以上で低メチル化を示したDMRは20ヵ所で、高メチル化を示したDMRは1ヵ所であった。RA処理iPSCは線維芽細胞に比べ、13ヵ所で低メチル化を示し、1ヵ所が高メチル化を示した。また、RA処理iPSCは未分化iPSCに比べ、5ヵ所で高メチル化を示した。このうち4ヵ所は、RA処理iPSCと線維芽細胞でメチル化の差異がない領域であり、RA処理により正常メチル化に回復したことを示す。これらの結果から、線維芽細胞をiPS化すると大半の刷り込みDMRは低メチル化を生じること、一部の刷り込みDMRはRA処理により正常メチル化に回復することがわかった。また、健常人とBeckwith-Wiedemann症候群(BWS)患者からiPSCを樹立した。2名の健常人末梢血由来iPSCそれぞれ4クローンずつ計8クローン、KvDMR1低メチル化で発症したBWS患者1例の末梢血から4クローン、H19-DMR高メチル化で発症したBWS患者1例の末梢血から4クローンのiPSCを樹立した。現在、樹立したiPSCについてゲノム中の38ヵ所の刷り込みDMRのメチル化解析を行っている。
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