研究課題/領域番号 |
23659182
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
倉橋 浩樹 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 教授 (30243215)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 習慣流産 / アネキシンA5 / プロモーター / 遺伝子多型 / グアニン4重鎖 / 二次構造 / SNP / 円旋光二色性 |
研究概要 |
習慣流産は多因子疾患であるが、胎盤における過凝固も要因のひとつである。私たちは以前の研究で、胎盤性抗凝固因子であるアネキシンA5遺伝子のプロモーター領域にある遺伝子多型が習慣流産と関連し、女性が少数アリルを持つと流産のリスクが増加することを示した。このプロモーター領域の多型の位置にはグアニン4重鎖形成のコンセンサス配列がある。近年、プロモーター領域のグアニン4重鎖構造の転写調節作用が注目されている。本研究では、プロモーター領域の多型がこのコンセンサスを変化させ、グアニン4重鎖の形成しやすさに影響し、その結果、少数アリルからのアネキシンA5の発現量が低下することが胎盤における過凝固をひきおこし、流産のリスクが増加するという仮説を証明する。本年度は、まず、胎盤でのアネキシンA5の発現量をqRT-PCRにて検討したところ、少数アリルをヘテロで持つ胎盤は、多数アリルのホモの胎盤と比べて、発現量が有意に低かった。また、アリル特異的qRT-PCRの解析系を確立し、ヘテロの胎盤内で比較したところ、少数アリル由来の産物の方が多数アリル由来の産物より発現量が低かった。次に、ルシフェラーゼシステムを用いてプロモーター活性を調べたところ、少数アリルの方が多数アリルよりもプロモーター活性が有意に弱かった。円旋光二色性(CD)によりグアニン4重鎖形成能を検討したところ、多数アリルは生理的条件でグアニン4重鎖を形成し、少数アリルは多数アリルよりもグアニン4重鎖形成能が低下していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の第一段階として、遺伝子多型と遺伝子発現量の関係を証明すること、第二段階として、遺伝子多型とグアニン4重鎖形成能の関係を証明すること、の2つのステップに明確に分け、作業を単純化した研究計画が奏功したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次のステップとしては、遺伝子多型が発現量に影響することが、グアニン4重鎖形成能の変化を介していることを証明する、というやや複雑なステップになるが、グアニン4重鎖のコンセンサス配列の人工的な変異体の利用、グアニン4重鎖形成、安定化をさせる化学物質の利用、などを予定している。また、可能なら、グアニン4重鎖形成とメチル化との関連も検討したい。多型がヘテロのサンプルを用いてバイサルファイト法でアリル特異的メチル化の有無を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の研究計画を一部変更して単純化して行ったため、よい研究成果は得られたが、予想より研究期間を要した。そのため、一部の計画を次年度に移行し、主に物品費を次年度へ繰り越した。次年度は、主に消耗品に使う予定であるが、最終年度であり、研究成果の報告を行う予定であり、学会発表のための国内外の旅費、ならびに、論文作成のための英文校閲、投稿料などに使用することも計画している。
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