研究課題/領域番号 |
23659186
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
北澤 荘平 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90186239)
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研究分担者 |
北澤 理子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00273780)
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キーワード | メチル化シトシン / 組織化学 |
研究概要 |
本研究は、遺伝子の特定の部位、特に調節遺伝子(promoter領域)に存在するCpG-islandやゲノム刷り込み現象に関する部位のメチル化シトシンを、細胞や組織の形態を保ったままin situで検出する組織化学的手法を、世界に先駆けて開発することを目指したものである。目的とするメチル化シトシンを有するDNAとプローブDNAとが二本鎖を形成したときに想定される立体構造より、理化学研究所岡本研究員らが開発した部位特異的DNAメチル化に対してメチル化シトシンとオスミウム酸により錯体形成するhybrine-adenin標識プローブ(ICONプローブ)を導入して研究を進めた。特定塩基配列のメチル化シトシンを認識するICONプローブと染色体上でのPCR(PRINS)法との併用による新たな病理組織診断手法を開発することにより、腫瘍をはじめとする種々の病態に関与するエピジェネティクス変化を、最も早期に検出できる検査方法の構築を目標として研究開発を行った。単一塩基レベルで検出できる精度、染色体や細胞組織の固定条件や温度条件が概ね適切であれば検出できる安定性を担保するために、種々のプロトコールについて検討を重ねた。特に、Padlockプローブという管状構造を形成するプローブを用い、常温増幅法とrolling cycle PCR法との併用方法を確立しつつある。 成果の一部は、H24年8月26日-29日のDetection of DNA methylation in pathology section. (Symposium) 14th International Congress of Histochemistry and Cytochemistryにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液相反応での予検討:まず、Padlockプローブの特異性の検討、rolling cycle PCRの至適反応条件を設定するために、試験管内の反応系を構築して検討を行った。プローブ調整濃度、制限酵素の使用方法、反応温度、反応時間についての条件設定は概ね完了し、高感度で再現性よく増幅反応を行うことができるようになった。 培養細胞での予検討:検討対象となる細胞の固定条件については、固定液の種類、固定時間、固定後処理方法について検討を重ねた。現在までに、安定した結果が得られる処理方法を確立しつつある。染色体レベルでのシグナル検出を行うために、染色体標本の至適条件についても検討を進めている。 組織標本での予検討:一般の病理組織標本を用いる前に、厳密な温度管理・時間設定で4%ホルムアルデヒド固定されたマウスの臓器の組織標本を用いた。マウス組織標本上でハイブリダイゼーション、rolling cycleを行い、再現性よく特異的なシグナルを検出することに成功した。さらに、一般的な病理標本の作製工程を経た組織標本を用いて試行し、有意なシグナルを検出できるようになった。通常の標本での解析を進め、実用化を目指すにあたって、高感度の検出が要求されるので、さらなる条件設定が必要であるが、本研究計画は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム上の特定部位におけるシトシンメチル化の状態が in situで検出できるようになれば、これまで解析が不可能であった、1)ゲノムインプリンティングとがん、2)再生、リプログラミングにおける脱メチル化の機構、3)発生初期でのシトシンメチル化パターンの形成、4)非CpG-island領域のメチル化による遺伝子発現制御と疾患病態、などの応用研究へと発展させることが可能である。 今後は、通常の病理組織標本上で、安定的にPadlock プローブによる反応を行う条件設定を進め、特定の疾患の病理組織標本を in situメチル化検出に供することができるようにすることを目指す。 H25年度は、特定の遺伝子プロモータ領域のメチル化に対するプローブの設計、特異性の検証、至適条件の設定をおこない、培養細胞染色体標本と病理組織標本への展開を進める。 成果は、内外の学会や論文などに報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでに獲得した科研費により整備してきた既存の機器を運用することができるので、経費は薬品、消耗品などの物品費、成果発表旅費、英文論文校閲などにあてる予定である。 ICON プローブ、Padlock プローブなど特殊なDNAや、PCR primerの受託作成は重要であり、昨年度からの繰り越し経費を25年度早期に使用することにより、研究計画を遅滞なく進めることができる。。
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