研究課題/領域番号 |
23659190
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
岡安 勲 北里大学, 医学部, 名誉教授 (20014342)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ビタミンA欠乏 / 潰瘍性大腸炎 / DSS 大腸炎 / 上皮下筋線維芽細胞 / 樹状細胞 |
研究概要 |
マウスをVitamin A 欠乏食或いはVitamin A 補充食で持続飼育してVitamin A (-), Vitamin A (+) マウス2群を作成した。この2群のマウスに1% Dextran sulfate sodium (DSS) 溶液の経口投与によって、ヒト潰瘍性大腸炎(UC)のモデルである DSS colitis を誘導して、2群間における急性大腸炎発症の違いを検索した。 その結果、Vitamin A (-)群では、Vitamin A (+) 群に比較して大腸炎の程度(血便の出現、大腸の長さの短縮、組織学的に評価したcolitis score)が有意に増悪していた。また、同時に検索した肝臓星細胞、大腸粘膜上皮下筋線維芽細胞中のVitamin A脂肪滴を電子顕微鏡下で数えて、Vitamin A (-) 群でその脂肪滴の数が有意に減少していることを確認した。また、大腸粘膜陰窩あたりの上皮下筋線維芽細胞(smooth muscle actin 陽性)の数が Vitamin A (-) 群で有意に減少していることも確認した。さらに粘膜固有層におけるCD11c 陽性樹状細胞の数がVitamin A (-) 群で有意に増加していることをみとめた。 cDNA microarray 解析では両群の比較において、発現に差のある遺伝子をみとめ、其のうち複数の遺伝子はDSS colitis 増悪と関連性がある可能性をみとめた。 以上より、Vitamin A (-) マウスでは、Vitamin A 欠乏のために樹状細胞の機能障害があり、その代償として、CD11c 陽性樹状細胞が大腸粘膜で増加していると推定される。また、大腸粘膜陰窩の上皮下筋線維芽細胞も数の減少とともに機能障害が生じたと推定される。これらによって、大腸炎の増悪が生じたものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Vitamin A 欠乏・補充マウスの作成して、急性潰瘍性大腸炎 (UC) モデルとしての DSS colitis の誘導を行い、前者ではcolitis の発症が後者に比較して有意に増悪していることを認めた。さらにマウス大腸粘膜を使用して、cDNA microarrayによる網羅的な遺伝子発現を検索し、2群間における遺伝子発現の差を得た。
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今後の研究の推進方策 |
Vitamin A 欠乏・補充マウスの2群において、慢性UCモデルとしてのDSS colitis の長期観察、DSSの間歇的投与による慢性colitisの誘導を行い、Vitamin A欠乏による慢性colitis の増悪を確認する。さらにH23年度の検索で得られたVitamin A 欠乏に特異的な遺伝子、タンパク発現異常が慢性UCモデルで更に顕在化していることを確認する。これらの結果から、発展途上国における小児のVitamin A欠乏性の下痢・大腸炎-死亡の危険性をVitamin A投与によって未然に防ぐという方策の科学的根拠とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. Vitamin A 欠乏状態において慢性大腸炎が増悪することを観察するため、多数のマウスを使用した長期in vivo 実験を行う。そのためのマウス飼育関連費用2. in vivo 実験の解析のための病理組織関連検索などの費用3. 出現する大腸炎の発症機序およびその増悪因子を解析するためのin vitro 実験費用
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