研究概要 |
12番染色体と16番染色体の相互転座によるTLS-CHOP遺伝子が原因とされる粘液型/円形細胞型脂肪肉腫は、中高年で発生する軟部肉腫の中でも発生頻度が高い。本研究課題においては、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫細胞をYamanaka factorによって染色体をリプログラミング(初期化)し、脂肪細胞に分化誘導を行うことで腫瘍増殖を抑制する、革新的な分化誘導治療の開発を目指す。 昨年度は、t(12;16)(TLS-CHOPキメラ遺伝子陽性)の粘液型/円形細胞型脂肪肉腫の培養細胞株にOct4,Sox2, Klf4, c-Mycを導入し、増殖能を検討したが、細胞形態や増殖能の変化はみられなかた。 今年度は、昨年度の結果を踏まえて、4因子の遺伝子導入効率の検討、さらには本腫瘍において、分化誘導を起こすことができるmiRNAの同定を行った。miRNAの同定には、正常脂肪細胞を用いて、分化誘導前後におけるmiRNAの発現をマイクロアレイ法にて行った。その結果、数種のmiRNAの同定に成功した。その一つはmiR-486である。興味深い事に、miR-486は、TLS-CHOP遺伝子の標的遺伝子であることも示された。また、miR-486をTLS-CHOPキメラ遺伝子陽性の粘液型/円形細胞型脂肪肉腫の培養細胞株に導入する、増殖能の抑制が観察された。これらの結果は、miR-486が脂肪細胞における分化能の制御によって、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫の増殖を制御している事を示す。染色体の初期化と未分化状態との関連も今後の検討課題である。
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