研究概要 |
NK細胞腫瘍は東南アジアに高頻度に認められる悪性リンパ腫であり、EBウイルスの関与が強く示唆されているが、腫瘍化に関与するゲノム異常はこれまであまり明確にはなっていなかった。我々は多数検体を対象にアレイCGH解析を行い、高頻度欠失領域6q21領域から発現解析と相関させることで7つの候補遺伝子を見いだした。機能的解析により、真の標的遺伝子はPRDM1とFOXO3であることを明らかにし、報告した。これら一連の結果は樹立された細胞株を用いて機能的に検討したものであるが、次の挑戦的な研究段階として、正常細胞をもちいて腫瘍化機能を調べることである。これまでに、フィーダ細胞とIL7を用いるマウス正常B細胞長期培養系を利用して、悪性リンパ腫に高頻度に認められる転座関連遺伝子CCND1, BCL2, MYCの3つを同時に導入すると、フィーダ細胞とIL7に非依存性に増殖するようになり、マウス個体を死に至らしめるという実験系を確立できていた。この実験の応用として、これまで機能的解析が困難であったNK細胞腫瘍の腫瘍化能について解析するための実験系の確立を試みた。具体的には、正常NK細胞の増幅を可能とする人工的なフィーダ細胞(K562細胞に膜結合型IL-15とヒト4-1BBLを導入したもの: K562-mb15-41BBL)を用いる方法が確立されている。この方法では末梢血を特に精製することなく、IL2の存在下でNK細胞を100万倍程度に増幅することができる。増幅に要する期間は2-4週間程度であり、この間に様々な遺伝子導入を試みた。まず、EBウイルスの感染を試みたが、ほとんど感染が成立せず、EBウイルスの役割を検討することはできなかった。同時に、レンチウイルスベクターを用いて遺伝子導入が可能かどうか検討したが、じりつNK胞株と同様遺伝子導入効率が極めて悪かった。今回の実験で明らかになったことは、実験に十分なNK細胞が比較的簡単に得られることであり、遺伝子導入法としては、何らかの工夫が必要であることが明らかとなった。
|