研究課題/領域番号 |
23659204
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
竹屋 元裕 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (90155052)
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研究分担者 |
坂下 直実 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90284752)
菰原 義弘 熊本大学, 生命科学研究部, 講師 (40449921)
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キーワード | マクロファージ / 古典的活性化 / オルタナティブ活性化 / 天然化合物 / corosolic acid / onionin A / STAT3 |
研究概要 |
マクロファージの活性化は、大きく古典的活性化(M1)とオルタナティブ活性化(M2)に二大別され、活性化の違いが種々の病態に大きな影響を与える。本研究の目的はクロファージの活性化を制御する天然化合物をスクリーニングし、治療への応用の可能性を検討することである。昨年度までに、天然化合物ライブラリーの中からマクロファージのM1活性化を抑制する4種の化合物を同定した。一方、バナバ葉やリンゴ果実に含有されるトリテルペノイド化合物であるcorosolic acidやタマネギからの抽出物であるonionin AがM2活性化を強く抑制することを明らかにした。M2マクロファージは腫瘍内浸潤マクロファージとして腫瘍細胞の増殖を促進する作用を有するため、今年度はcorosolic acidに注目し、マウスへ移植腫瘍への効果を検討した。 マウス骨肉腫細胞を移植したマウス皮下にcorosolic acidを投与すると、皮下腫瘍が有意に縮小するとともに、肺転移が抑制された。組織学的検索では、腫瘍内浸潤マクロファージの数の減少は確認できなかったが、腫瘍内のTリンパ球の増加が観察された。そのメカニズムとして、corosolic acidはSTAT3の活性化の抑制を介して、M2マクロファージおよびmyeloid-derived suppressor cellsの活性化を抑制し、それに伴って腫瘍内のリンパ球が増加したものと考えられた。さらに、corosolic acidと抗がん剤であるアドリアマイシンやシスプラチンとを併用すると、抗腫瘍作用が増強することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの成果として、M2マクロファージのマーカーであるCD163の発現を指標として天然化合物のスクリーニングを実施し、CD163の発現を増強 (M1活性化を抑制)する化合物として、isoquercetinなどの4種の化合物を同定することが出来た。一方、CD163の発現を抑制(M2活性化を抑制)する化合物として、corosolic acidやonionin Aを同定した。 本年度の検討では、M2マクロファージの性格を有する腫瘍内浸潤マクロファージ(TAM)をターゲットして、担癌マウスへのcorosolic acidの効果を検討したところ、皮下腫瘍の縮小と肺転移の抑制が観察され、in vivoにおいてもcorosolic acidの効果が確認され、マクロファージの活性化の制御(この場合はM2活性化の抑制)によって、腫瘍増殖の制御が可能であることがわかったことから、おおむね順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの検討から、M2マクロファージの活性化を抑制するcorosolic acidが腫瘍増殖抑制や転移抑制に効果があることが証明されたため、今後、corosolic acid に加えて、onionin AなどのM2活性化を抑制する化合物について、腫瘍浸潤マクロファージの活性化制御に基づいた腫瘍抑制効果を中心に検討を加えたい。培養細胞を用いた検討を継続すると共に,担癌マウスモデルを作成し、生体内における腫瘍増殖の抑制効果を検証する。この際、腫瘍内へのマクロファージの浸潤の程度やそのフェノタイプ、新生血管の数や密度等を解析するとともに転移の抑制の程度についても検討する。また腫瘍の種類による違いを検討するため、複数の癌細胞株を用いて検討を行う予定である。 さらに、各化合物における薬理作用を明らかにするため、これらの化合物によるマクロファージのM2活性化抑制の際の細胞内シグナル伝達経路の解析を行い、M2マクロファージの活性制御に基づいた腫瘍増殖制御の理論的裏付けを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は平成25年度請求額と合わせて、上記の実験における物品費に使用するとともに、成果発表のための旅費、ならびにその他の費用に使用予定である。
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