研究課題/領域番号 |
23659205
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
高松 哲郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40154900)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 心筋 / 収縮帯 / コスタメア / βジストログリカン / 緑色蛍光蛋白質 / 多光子 / レーザーアブレーション |
研究概要 |
心筋が虚血後に再灌流障害を受けると、アクチン・ミオシンの過収縮からなる収縮帯を伴う特徴的な壊死が生じる。この成因として、ナトリウム―カルシウム交換機構を介する細胞内のカルシウム過負荷が考えられている。サルコメアと細胞外基質をつなぐコスタメアは、収縮タンパクであるアクチンと細胞外基質の機械的連結を担うことから、カルシウム過負荷と相まってコスタメアが破綻し過収縮すれば、サルコメア単位での収縮帯の形成が説明できる。この収縮帯形成の本質として、コスタメアの構成タンパクの脱落あるいは破綻すると仮説を立てた。実際免疫組織化学的検索を行ったところ、収縮帯部に細胞膜上のβジストログリカン(β-DG)の脱落を観察している。そこでβ-DG分子の局所的機能破綻が収縮帯形成の原因になるとの仮説を検証するために、多光子励起分子機能阻害法(CALI法)を用いてβ-DGの特異的機能阻害による収縮帯形成の再現を試みることを目的とした。当該年度は、新生仔Wistarラット(2日齢)から心臓を摘出し、コラゲナーゼにより心筋細胞を単離することによって、初代培養心筋細胞を作製し、培養2日後心筋細胞にβ-DG cDNAのC末端にオワンクラゲ由来のEGFP-cDNAを融合させた遺伝子を導入させることによって、EGFP-βDG発現心筋細胞を作製した。心筋細胞膜上のEGFP蛍光に対して多光子レーザ(MaiTai、Spectra-Physics社、波長850 nm、パルス幅80 fs、82 MHz)を用いてCALIを施した。CALIにおける最適条件検討を行うために、CALI後、ファロイジン染色を行い、収縮帯の形成を観察した結果、レーザーパワー5.5 MW/cm2において、収縮帯が最も形成されやすく、このレーザーパワーを超えると心筋細胞全体が破壊されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EGFP-βDGの発現培養心筋の確立とCALIの指摘条件の検討がおおむね終了し、今後の定量解析のための基礎的実験環境が整ったと判断されるため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立した培養心筋とCALIの条件を元に、βDGの局所の機能阻害・破壊が収縮帯を形成するか否かにつき定量的に解析を行う。併せてカルシウム動態の解析により、収縮帯の形成がβDGの局所の機能阻害・破壊のみで生じるのか、カルシウム過負荷の関与が必要か否かを明らかにする。さらにウイルスベクターを用いて成獣心にEGFP-βDG発現させ、実際の心臓にCALIを施し、収縮帯形成機構を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の次年度研究推進方策に則って、次年度は、研究費を実験動物およびその飼育に係る費用、カルシウム蛍光指示薬などの薬品や培養皿など実験に用いる消耗品の費用、研究成果の発表のための学会発表旅費ならびに英語論文の校正費用に充てる。
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