研究課題/領域番号 |
23659208
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 健太郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30401178)
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研究分担者 |
辻 浩一郎 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (50179991)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | マラリア原虫 / 幹細胞 / 赤血球 |
研究概要 |
マラリア研究はワクチン・抗マラリア薬開発を目的として、赤血球侵入についての研究が国内外で盛んに行われてきた。ワクチン等のターゲットになる原虫膜抗原とそのレセプターの同定には、主に患者由来の特定の赤血球膜蛋白質が欠損したミュータント赤血球が用いられてきたが、赤血球には増殖能力がなく、ミュータント赤血球は希少であり、新鮮な状態で入手することは困難である。また、特定の表面蛋白質がうまく欠損した赤血球の存在は稀であり、入手できても溶血のため正確な解析ができないため、凍結保存も難しい。このような状況で我々はマラリア原虫の赤血球侵入レセプターの解析を行ってきたが、レセプター遺伝子が欠損した患者赤血球が手に入らない場合はトリプシンなどの消化酵素を用いて間接的に赤血球の膜表面蛋白質や糖鎖を修飾することでレセプターを消失させる以外に方法がない。このため、実際の感染状態における最終的なレセプター同定の証明を行うことは難しい。従って、マラリア原虫の最終的なレセプター同定の証明が困難であるため、本研究計画では原虫宿主細胞である赤血球への人為的な操作を可能とする系の確立を目指す。本年度は、in vitroにおいて幹細胞から成熟赤血球を効率よく作製する技術の構築を中心に行う予定であったため、胚性幹細胞(ESC)や人工多能性幹細胞(iPSC)を取り扱う前段階として、CD34陽性造血幹細胞を臍帯血から分離、培養する技術の習得を目指した。その後、分化誘導法の検討を行った。先行研究を参考に、サイトカインの種類、濃度、培養期間など様々な因子を調整し、脱核まで至る赤血球を最も効率よく得られる条件の検討を行った。しかし、まだ十分な効率とはいえず、マラリア原虫の感染を確認するに至っていない。したがって、今後さらに効率の良い条件を見いだす必要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臍帯血からCD34陽性細胞を分離する際の回収率や、その後の培養での増殖率などの点で取り扱い技術の向上や度重なる条件設定の改善により、ある程度の効率を達成しており、今後さらなる改善が期待できる。平成23年度の達成目標は、造血幹細胞から赤血球への分化誘導法の目処をつけることとウイルスベクターの準備であったことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
特定分子が欠損した分化赤血球の作製a) 分化赤血球への遺伝子組換えの導入法としては、ES細胞で実績のあるレンチウイルスベクターを用いる方法を予定しており、Short hairpin RNA導入によるRNA干渉法(RNAi)と外来遺伝子導入(GFP等のマーカー遺伝子)を一度に行えるシステムを構築する。この系を使って、特定分子を欠損させた赤血球と元の赤血球でのマラリア原虫の感染率の比較を行う。b) 欠損させる分子としては、熱帯熱マラリア原虫の赤血球膜レセプターの1つであるGlycophorin A、ローデントマラリア原虫の赤血球膜レセプターの1つであるDuffy結合タンパク質等を予定している。これら特定分子が欠損した分化赤血球を移植したマウス感染モデルを用いて、宿主細胞侵入に関わる分子の直接的な解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
RNAi等に使用するオリゴDNA, RNAについての経費も物品費に計上した。消耗品ではマラリア原虫感染細胞から実際に放出された原虫膜抗原と赤血球との結合解析に使用するRI化合物、熱帯熱マラリア原虫等を培養する際に必要となる特殊な混合ガス(窒素ガス、炭酸ガス)のための経費を計上した。動物を用いた原虫の感染実験を行うため、マウス、ラット等の実験動物の購入が必要であるため、消耗品費に計上した。全研究年度にわたって、ガラス、プラスチック消耗品、一般試薬にかかる経費を物品費に計上した。平成23年度は主に国内での学会発表を行うため、発表研究者の国内旅費を旅費として計上した。研究分担者との研究打ち合わせを何度も行う必要があり、本郷キャンパスとのは別の白金キャンパスにある医科学研究所の辻准教授との研究打ち合わせ費用を国内旅費に計上した。平成24年度はそれまでに得た研究成果を海外の国際学会及び国内の学会等において発表していくため、発表研究者の国内及び外国旅費を計上した。また、平成24年度は研究成果を論文として発表するため、論文別刷費、英文校閲費を計上した。
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