研究課題/領域番号 |
23659208
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
加藤 健太郎 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 特任准教授 (30401178)
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研究分担者 |
辻 浩一郎 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (50179991)
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キーワード | マラリア原虫 / 幹細胞 / 赤血球 |
研究概要 |
マラリア研究はワクチン・抗マラリア薬開発を目的として、赤血球侵入についての研究が国内外で盛んに行われてきた。ワクチン等のターゲットになる原虫膜抗原とそのレセプターの同定には、主に患者由来の特定の赤血球膜蛋白質が欠損したミュータント赤血球が用いられてきたが、赤血球には増殖能力がなく、ミュータント赤血球は希少であり、新鮮な状態で入手することは困難である。また、特定の表面蛋白質がうまく欠損した赤血球の存在は稀であり、入手できても溶血のため正確な解析ができないため、凍結保存も難しい。このような状況で我々はマラリア原虫の赤血球侵入レセプターの解析を行ってきたが、レセプター遺伝子が欠損した患者赤血球が手に入らない場合はトリプシンなどの消化酵素を用いて間接的に赤血球の膜表面蛋白質や糖鎖を修飾することでレセプターを消失させる以外に方法がない。このため、実際の感染状態における最終的なレセプター同定の証明を行うことは難しい。従って、マラリア原虫の最終的なレセプター同定の証明が困難であるため、本研究計画では原虫宿主細胞である赤血球への人為的な操作を可能とする系の確立を目指す。 本年度は、in vitroにおいて幹細胞から成熟赤血球を効率よく作製するため、胚性幹細胞(ESC)や人工多能性幹細胞(iPSC)を取り扱う前段階として、CD34陽性造血幹細胞を臍帯血から分離、培養する技術を習得し、分化誘導法の検討を行った。さらに特定分子が欠損した分化赤血球の作製を行うため、分化赤血球への遺伝子組換えの導入法としては、ES細胞で実績のあるレンチウイルスベクターを用いて、Short hairpin RNA導入によるRNA干渉法(RNAi)と外来遺伝子導入(GFP等のマーカー遺伝子)を一度に行えるシステムの構築を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度はES細胞で実績のあるレンチウイルスベクターを用いて、Short hairpin RNA導入によるRNA干渉法(RNAi)と外来遺伝子導入(GFP等のマーカー遺伝子)を一度に行えるシステムの構築を行う予定であったが、研究協力者が平成24年11月に大学の研究所に就職が決定したため、年度末においてやや計画が遅れてしまった。このため事業期間の延長を行い、次年度は代替者を確保の後、赤血球様細胞を用いた熱帯熱マラリア原虫の感染実験と解析結果の取りまとめを行う。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年に確立を目指した分化赤血球への遺伝子組換えの導入法を使って、特定分子を欠損させた赤血球と元の赤血球でのマラリア原虫の感染率の比較を行う。欠損させる分子としては、熱帯熱マラリア原虫の赤血球膜レセプターの1つであるGlycophorin A、ローデントマラリア原虫の赤血球膜レセプターの1つであるDuffy結合タンパク質等を予定している。これら特定分子が欠損した分化赤血球を移植したマウス感染モデルを用いて、宿主細胞侵入に関わる分子の直接的な解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究協力者が平成24年11月に大学の研究所に就職が決定したため、事業期間の延長を行った。次年度は代替者を確保の後、赤血球様細胞を用いた熱帯熱マラリア原虫の感染実験と解析結果の取りまとめを行う。 RNAi等に使用するオリゴDNA, RNAについての経費も物品費に計上した。消耗品ではマラリア原虫感染細胞から実際に放出された原虫膜抗原と赤血球との結合解析に使用するRI化合物、熱帯熱マラリア原虫等を培養する際に必要となる特殊な混合ガス(窒素ガス、炭酸ガス)のための経費を計上した。動物を用いた原虫の感染実験を行うため、マウス、ラット等の実験動物の購入が必要であるため、消耗品費に計上した。全研究年度にわたって、ガラス、プラスチック消耗品、一般試薬にかかる経費を物品費に計上した。平成25年度はそれまでに得た研究成果を海外の国際学会及び国内の学会等において発表していくため、発表研究者の国内及び外国旅費を計上した。また、平成25年度は研究成果を論文として発表するため、論文別刷費、英文校閲費を計上した。
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