研究課題
マラリア研究はワクチン・抗マラリア薬開発を目的として、赤血球侵入についての研究が国内外で盛んに行われてきた。ワクチン等のターゲットになる原虫膜抗原とそのレセプターの同定には、主に患者由来の特定の赤血球膜蛋白質が欠損したミュータント赤血球が用いられてきたが、赤血球には増殖能力がなく、ミュータント赤血球は希少であり、新鮮な状態で入手することは困難である。また、特定の表面蛋白質がうまく欠損した赤血球の存在は稀であり、入手できても溶血のため正確な解析ができないため、凍結保存も難しい。このような状況で我々はマラリア原虫の赤血球侵入レセプターの解析を行ってきたが、レセプター遺伝子が欠損した患者赤血球が手に入らない場合はトリプシンなどの消化酵素を用いて間接的に赤血球の膜表面蛋白質や糖鎖を修飾することでレセプターを消失させる以外に方法がない。このため、実際の感染状態における最終的なレセプター同定の証明を行うことは難しい。本研究課題の目的は、幹細胞から誘導分化させた赤血球様細胞を用いたマラリア原虫の培養系の確立を行うことで、現在まで不可能であった宿主細胞である赤血球に対する遺伝子操作を可能とし、感染レセプター等の感染に重要な因子の直接的な解析を行うことにある。最終年度は、特定分子が欠損した分化赤血球の作製を行うため、分化赤血球への遺伝子組換えの導入法としてES細胞で実績のあるレンチウイルスベクターを用いてシステムの構築を試みた。研究機関全体を通じて実施した研究成果としては、ヒト臍帯血造血幹細胞及びMEDEPから誘導分化させた赤血球様細胞をついて熱帯熱マラリア原虫の感染を確認した。さらに、in vitroにおいて幹細胞から成熟赤血球を効率よく作製するため、CD34陽性造血幹細胞を臍帯血から分離、培養する技術を習得し、分化誘導法の検討を行った。
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http://www.obihiro.ac.jp/~globalinfection/index.html