研究課題
本研究は、難治性の寄生原虫感染症であるリーシュマニア症を引き起こすリーシュマニア原虫に対して高い増殖抑制効果を示す化合物を探索し、新規抗リーシュマニア薬を開発することを目標としている。 平成23年度は、皮膚型リーシュマニア原虫であるLeishmania majorの培養が比較的容易な前鞭毛型(Promastigotes)リーシュマニア原虫を用いて抗リーシュマニア活性を測定し、哺乳動物細胞を用いて細胞障害性を評価した。一次スクリーニングは化合物を1μM、100nM、10nMの3段階に希釈し、抗リーシュマニア活性を評価した。一次スクリーニングの結果、当研究室で有している化合物ライブラリーから38種類の化合物を選抜し、これら化合物に関しては、二次スクリーニングとして化合物を6段階に希釈し、抗リーシュマニア活性を評価するとともに、哺乳動物細胞を用いた細胞毒性の評価も行った。38種類の化合物の中から、リーシュマニア原虫に対する50%増殖阻害濃度が27 nM、42 nMと低い化合物2種類(化合物WA及び化合物WB)を見出した。しかし、哺乳動物細胞を指標とした選択毒性が数倍程度しか無く、高い選択毒性は得られなかった。我々のin vitroスクリーニングにおいて、化合物の選抜指標として用いている抗リーシュマニア薬Amphotericin Bの50%増殖阻害濃度は、リーシュマニア原虫では63 nM、哺乳動物細胞では2.9μM(選択毒性46倍)である。本年度は我々のスクリーニングからAmphotericin Bより優れた選択毒性を示す有効な化合物が選抜されていない。そのため、平成24年度も継続して別の基本骨格を示す化合物ライブラリーの中から抗リーシュマニア薬候補化合物の探索を行う。
3: やや遅れている
平成23年度中に、in vitroスクリーニングから複数の有望な抗リーシュマニア薬候補化合物を見出し、in vivoスクリーニングで、その抗リーシュマニア効果を評価している予定であったが、in vitroスクリーニングにおいて既存の薬剤と比較して数十倍以上の選択毒性を示す化合物を見出す事が出来なかった。実験の遂行上の問題は無いが、結果として、当初、期待していた基本骨格の化合物群の中から有望な新規阻害剤の選抜が出来なかったことからやや遅れていると判断した。
平成23年度の研究から抗リーシュマニア効果が強く選択毒性の高い化合物を見出すことは出来なかったが、リーシュマニア原虫に対する50%増殖阻害濃度が27 nM、42 nMと低濃度で抗リーシュマニア効果を示す一連の化合物WA及びWBを見出すことができた。そのため、これら2種類の化合物は哺乳動物細胞においては標的タンパク質が明らかになっている化合物の誘導体であることから、関連化合物のスクリーニングをさらに行なう。また、リーシュマニア原虫における本標的タンパク質の重要性を探るとともに、薬剤標的分子になり得るか評価する。
選択毒性は低いが抗リーシュマニア効果の高い化合物を見出すことは出来ているので、この化合物の誘導体及び関連化合物のin vitroスクリーニングを行なうために研究費を使用する。また、抗リーシュマニア効果の高い化合物は哺乳動物細胞においては標的タンパク質が明らかになっている化合物の誘導体であることから、リーシュマニア原虫における本標的タンパク質の重要性を探るとともに、薬剤標的分子になり得るか評価するための研究費としても使用する計画である。
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Parasitology International
巻: 60 ページ: 488-492
巻: 60 ページ: 270-273
巻: 60 ページ: 231-236
http://www.pharm.okayama-u.ac.jp/lab/joho/index.html