研究課題
本研究は、難治性寄生虫感染症であるリーシュマニア症を引き起こすリーシュマニア原虫に強い阻害活性を示す治療薬の開発を目的としている。化合物のスクリーニングは、皮膚リーシュマニア原虫である Leishmania major の前鞭毛型 (Promastigotes) リーシュマニア原虫を用いて抗リーシュマニア活性を測定し、哺乳動物細胞(FM3A細胞)を用いて細胞障害性を評価した。平成24年度は以下の研究成果を得た。(1) Hsp90阻害剤である Geldanamycinとその誘導体、及びGeldanamycin系とは異なる低分子Hsp90阻害剤を用いて抗リーシュマニア活性評価を行ない、リーシュマニア原虫に対する50%増殖阻害濃度(EC50)が30~40 nMの化合物を見出した。これら化合物の細胞障害性評価を行ったところ、原虫阻害能と同程度の細胞障害性を有することが判った。(2) 従来の治療剤であるアンチモン製剤を含めリーシュマニア症治療薬は副作用が強いことが問題となっている。そのため、民間療法で使われる天然生薬資源を用いて抗リーシュマニア効果を評価した。評価したいずれの化合物もEC50値は1000 nM程度であり、一桁以上の選択性を示す化合物は見出せなかった。現在、これら化合物の構造類縁体を用い、構造ー活性相関解析を行っている。(3) リーシュマニア原虫の分子シャペロンHsp90と反応する抗Hsp90抗体を見出した。(4) プロテオミクスの手法を用いたリーシュマニア原虫のHsp90複合体の構成因子を解析できる基盤を構築した。今後、宿主であるヒトとリーシュマニア原虫のHsp90、及びHsp90複合体の構成因子の違いを明らかにし、リーシュマニア原虫のHsp90を選択的に阻害する化合物の探索を行ないたい。
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