研究課題
1.アクチン重合を指標としたダイナミン阻害剤スクリーニング:ダイナミン阻害剤ダイナソアの構造類似体181種類について、in vitro アクチン重合を指標としてスクリーニングした。リーディング化合物であるダイナソア(既知のダイナミン阻害剤よ)りも、強力なアクチン線維形成阻害作用を持つ分子(N'-(4-(diethylamino)benzylidene)-4-methoxybenzohydrazide)(DBHA)を同定した。DBHAのがん細胞の遊走に対する効果を調べた。DBHAは、ヒト肺ガン細胞株(H1299)における血清刺激依存性ラッフル膜形成を強く阻害(IC50=16.7 μM)するとともに、細胞遊走活性を著明に抑制することを創傷治癒試験により明らかにした。細胞遊走を阻害するDBHAの濃度では、細胞毒性も見られなかった。2.ダイナミンによるアクチン制御機構:ダイナミン/コルタクチンによるアクチン制御機構の一部を解明した。ダイナミン/コルタクチン複合体は、神経細胞成長円錐の糸状仮足に局在しており、ダイナミン阻害剤やコルタクチンの発現抑制によりこれら分子の機能を抑制すると、成長円錐の急激な退縮を引き起こした。分子機構については、ダイナミン/コルタクチン複合体はリング状を呈し、機械的にアクチン線維を束化することにより成長円錐の糸状仮足を安定させることが判明した。これらの結果結果を学術論文にまとめ、米国神経科学会誌に発表した(Yamada et al. J. Neurosci. 2013)。3.マラリアダイナミンの機能解析:マラリア原虫2種類のダイナミンアイソフォーム(pfDyn1, pfDyn2)について、リコンビナントタンパクを昆虫細胞に発現させた。また、pfDyn1, pfDyn2の部位特異的抗体を作成した。
2: おおむね順調に進展している
1.アクチン重合を指標としたダイナミン阻害剤スクリーニング:ダイナソアよりもアクチン重合、ラッフル膜形成, 細胞遊走に対する阻害効果が高く、毒性の少ない化合物にヒットしているので、スクリーニングは順調に達成できている.2.ダイナミンによるアクチン制御機構:ダイナミン/コルタクチン複合体によるアクチン制御機構の解析についても順調に進んでいる。既述の研究成果に引き続いて、ダイナミン、コルタクチンのリン酸化による複合体の機能制御調べた結果、コルタクチンがin vitroでタンパクキナーゼCによりリン酸化され、リン酸化によりアクチン束化能が顕著に減少することを見いだしている。3.マラリアダイナミンの機能解析:pfDyn1, pfDyn2発現ベクターを作成し、昆虫細胞に発現させた。精製については、pfDyn2は精製方法が確立されたが,pfDyn1については現在取り組んでいる。pfDyn1, pfDyn2の部位特異的抗体については、抗原を特異的に認識することをウエスタンブロットにより確認した。
1.アクチン重合を指標としたダイナミン阻害剤スクリーニング:これまでのスクリーニング、DBHAに関する解析結果を学術論文にまとめる。2.ダイナミンによるアクチン制御機構:今後、アクチン制御におけるダイナミン・コルタクチン複合体のリン酸化の生理的意義を明らかにする。平行して、ダイナミン/コルタクチン複合体の構造解析を安藤敏夫教授(金沢大学)との共同研究によりすすめる。3.マラリアダイナミンの機能解析:昆虫細胞に発現させたpfDyn1, pfDyn2を精製市,GTPアーゼ活性をHPLCにより解析する。また、作成した部位特異的抗体を用いて、マラリア原虫におけるpfDyn1, pfDyn2の局在を明らかにする。
マラリア原虫の培養実験を本年度に開始する予定であったが、設備のセットアップと遺伝子組み換え実験計画書の承認が遅れたため、次年度に開始することになった。これに伴い、その実験のための研究費も次年度に繰り越した。
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