三日熱マラリア原虫は、ルーチンに行える培養系が確立されておらず、研究が著しく遅れている。その理由は、この原虫が幼若赤血球にのみ侵入するが、長期培養のための十分な幼若赤血球の確保が困難なためである。本研究では、全ステージの赤血球に侵入できる熱帯熱マラリア原虫の赤血球認識リガンドを三日熱マラリア原虫に人工染色体を用いた遺伝子導入法により導入し、全ステージの赤血球に侵入ができる三日熱マラリア原虫を創出することで、ルーチンに簡便に維持できる実用的レベルの三日熱マラリア原虫の培養系を確立することを目的とする。平成24年度は、三日熱マラリア原虫で使用する予定の非翻訳領域の機能評価を継続して行った。系統的に比較的近いネズミマラリア原虫を用いたルシフェラーゼ・アッセイにより、三日熱マラリア原虫の幼若赤血球結合タンパク質の上流2.0 kbがプロモーター活性を有していること、また、熱帯熱マラリア原虫熱耐性タンパク質のプロモーターがネズミマラリア原虫では活性が弱いことがわかった。非翻訳領域の機能評価をより詳細に行うため三日熱マラリア原虫とより近縁であるサルマラリア原虫を用いることを計画し、オランダの研究機関に2カ月間出張して各種組換えサルマラリア原虫を作製した。三日熱マラリア原虫の人工染色体も完成し、これらを保有する遺伝子組換えネズミマラリア原虫とサルマラリア原虫を作製し、組換えサルマラリア原虫を日本にて解析するための輸入手続きを完了した。また、三日熱マラリア原虫への遺伝子導入条件を検討するためにタイに2カ月出張し、実験に適する条件の三日熱マラリア原虫を一検体得、予定していた遺伝子導入プロトコールを試みたがルシフェラーゼ活性は検出できず、さらなる条件検討が必要と考えられた。
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