研究課題/領域番号 |
23659216
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
松岡 裕之 自治医科大学, 医学部, 教授 (10173816)
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キーワード | がん細胞 / 転移 / 吸血動物 / 唾液腺 / 抗凝固物質 / 節足動物 |
研究概要 |
マウスの大腸がん細胞株Colon26にLuciferase 遺伝子を組込んだ Colon26-Lici を高崎健康大学 村上孝教授よりもらい受け使用している。昨年度の研究により、この細胞の培養にはDMEM medium が適していると考えられたので、本年度はDMEM mediumのみを用いて培養した。 マウスは BALB/c メスを用いた。ペントバルビタール麻酔したマウスの心臓(左心室)へ直接注入を試みた。注入細胞数は50万とした。注射後7日後から7日ごとにマウスを麻酔してルシフェリンを注射し、in vivo imaging system を用いて細胞の定着・増殖の程度を追跡した。20匹まで実施したが、左心室への注入はうまく行かず、多くは右心室へと注入されてしまった。そのため7日目以降の観察では、肺におけるがん細胞の定着が見られるばかりであった。 そのため心臓への注入はそれ以上行なうことをやめ、Colon26細胞をマウス腹腔へ注射し、がん細胞の腹腔内定着とその増殖状況をモニターすることにし、がん細胞の定着を阻止する物質のスクリーニングをおこなった。 年度末の時点で、ハマダラカ唾液腺、ヒトスジシマカ唾液腺、アカイエカ唾液腺、チスイビルの唾液腺などを注射してColon26細胞の定着阻害の有無を追跡しているが、がん細胞の増殖でモニターする限り、対照マウスのがん細胞増殖との差を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス左心室への細胞注入が予定どおり行えていないところに最大の問題があった。何回も繰り返したあげく、心臓を介してがん細胞を注入することは中止とした。年度後半からは、がん細胞を腹腔内注射することで、腹腔内臓器への定着増殖を観察することにした。腹腔内の定着・増殖の度合いをルシフェレース活性を指標に観察している。まだ実験数が少ないが、転移阻害効果のある物質は今のところみつかっていない。
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今後の研究の推進方策 |
がん細胞の腹腔内注射、加えて唾液腺成分の腹腔内注射により、がん細胞の定着・増殖の度合いを、ルシフェレース活性を指標にひきつづき観察してゆく。なおマウスでの実験が不成功な場合を考え、培養がん細胞のin vitro における接着阻害をモニターすることで、がん細胞の定着を阻害する物質を見つけ出す方法を模索している。
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次年度の研究費の使用計画 |
in vitro 培養系に力点を移して研究費を使用してゆく。2年間余の研究の進展状況を総括して、学会発表は是非おこなうつもりである。
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