研究課題/領域番号 |
23659219
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
東江 昭夫 千葉大学, 真菌医学研究センター, 客員教授 (90029249)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | クリプトコックス / アミノ酸合成経路 / リジン合成経路 / システイン合成経路 / システイン合成酵素 |
研究概要 |
リジン合成経路 既に破壊株を取得していたLYS2以外に新たにLYS1,LYS5、LYS20の破壊株を作製した.lys2変異株についてマウスへの感染実験をおこなったところ、感染性について野生型株と区別できなかった.この結果は、クリプトコックスのリジン要求株はマウス体内のリジン(あるいは、リジンを含むペプチド)により要求性が満たされ、この経路の阻害剤は抗クリプトコックス製剤のターゲットには適さないように見える.しかし、本研究中にクリプトコックスのlys2とlys1変異株はリジンが存在してもアルギニンが共存すると増殖が阻害されることが見出され、この2つの遺伝子産物の内の一つの活性を阻害できればアルギニンによってクリプトコックス菌の増殖を阻害することの可能性が予想される.このような観点から、リジン経路の酵素も薬剤開発のターゲットとなりうる.システイン合成経路 クリプトコックスはパン酵母のCYS4およびCYS3と相同性の高い遺伝子を保有している.これらの遺伝子はホモシステインからシスタチオニンを経由してシステインを合成する経路の遺伝子で、パン酵母ではこれらの一方が欠損するとシステイン要求性を示す.クリプトコックスのCYS4を破壊したがシステイン要求性とはならなかった.このことから、クリプトコックスのシステイン合成経路はパン酵母のものおよびヒトのものと異なることが分かった.バクテリアのcysK(システイン合成酵素遺伝子)と高い相同性を示す遺伝子がクリプトコックスでは二つ存在し、遺伝子破壊実験の結果その内の一方(CYS1と命名)のみがクリプトコックスのシステイン合成酵素遺伝子として働くことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(理由)各種アミノ酸合成経路遺伝子の破壊は順調に進んでいる.これまで、ヒスチジン合成経路の全遺伝子、メチオニン合成経路の大部分の遺伝子を破壊した.これらの変異体のマウス感染モデルを用いた病原性の検査も進んでいる. これまで、クリプトコックスのシステイン合成経路について研究がなかったが、今回はじめてシステイン合成酵素遺伝子を同定することができた.クリプトコックスのシステイン合成系はヒトものものと異なることを明らかにし、システイン合成酵素を抗クリプトコックス剤のターゲットと決めることができた. LYS合成経路中の遺伝子の内、LYS1とLYS2は抗クリプトコックス剤のターゲットして有望であることを示せた.
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今後の研究の推進方策 |
システイン合成酵素の阻害剤をスクリーニングするアッセイ系を構築する。(1)in vivoアッセイ系の構築。申請者が開発した高発現ベクターでCYS1遺伝子を大量発現する株を作製し、システイン過剰生産による表現型の変化を探索する。表現型が見つかればそれを利用したスクリーニング系の開発が可能となる.(2)in vitroアッセイ系の構築.Cys1蛋白質の大量発現系を大腸菌で構築し、Cys1を精製する。これを用いたシステイン合成酵素活性のアッセイ系を用いて、化合物ライブラリーをスクリーニングする.(3)Cys1の構造からの阻害剤の予測.このアプローチのためにCys1の構造解析を行う.Cys1蛋白質の結晶化およびX線結晶解析を開始する.結晶解析が終了すれば、蛋白質の構造側から阻害剤の構造予測が可能となる. リジン合成経路の酵素ついても阻害剤のスクリーニング法を構築する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究会出席のための旅費約10万円、論文発表に必要な経費約20万円、残額全額を研究に必要な消耗品の購入にあてる.
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