研究課題/領域番号 |
23659221
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
法木 左近 福井大学, 医学部, 准教授 (30228374)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | PET / 感染症 / 分子イメージング / 感染巣 / 画像化 / 抗生物質 / 治療効果 / FAG |
研究概要 |
本研究の目的は、真菌・細菌に対する分子標的技術を用いて、生体内の感染巣をPET(Positron Emission Tomography)により画像化(イメージング)することである。そのため、真菌・細菌に特異的に取り込まれる分子イメージング剤として、N-[18F]Fluoroacetyl-D- glucosamine(18F-GlcNAc:FAG)を合成した。このFAGにより、細菌を感染させたラットをPET撮影することにより、感染巣を画像化できるかを検討した。具体的には、ラットの右肩に大腸菌を接種し、感染ラットを作製した。コントロールに左肩にテレピン油を接種し、非感染性の炎症巣を起こした。この同一ラットに対して、FDGとFAGとを一日あけて撮影した。その結果、FDGは両方に取り込まれたが、FAGは感染巣に取り込まれ、FAGは感染巣に特異的であった。これらの結果は、Nucl Med Biol 2011; 38(6).807-17.に発表した。また、感染ラットに対して、抗生物質を投与し治癒過程のPET撮影を行い、感染巣のstandardized uptake values (SUV)の変化を経時的に検討することを試みた。具体的には、同様にラット右肩に大腸菌を接種した感染ラットに、FAGにて感染巣への集積を確認後、抗生物質(メロペン)を腹腔内投与による治療を開始し、2日後、6日後、にPET撮影を行い、感染巣のFAGの取りこみの経時変化を調べた。感染巣における[18F]FAGの取りこみは Dr. View Software, version 2.0.0.を用いて定量化した。平均値を用いて、全ての関心領域(感染巣)をSUVに変換した。その結果、抗生物質に反応して、FAGの取りこみは減少し、生体内での抗生物質の治療効果を画像的に認めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である真菌・細菌に対する分子標的技術を用いて、生体内の感染巣をPET(Positron Emission Tomography)により画像化(イメージング)することに対して、FAG-PETを用いることによって、FAGによる生体内での大腸菌感染巣への取りこみを証明することができた。炎症巣にも集積するFDGと異なり、感染巣に集積することを示せたのは大きな成果であると考えられる。さらに、抗生物質による治療効果を画像的に提示することができた。同一個体内における感染巣の抗生物質などによる変化(治癒過程)は今まで画像化することは出来なかったが、今回初めて、感染巣の治癒過程を画像することができた。以上2点の理由からおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今回の生体内での感染巣はいずれも大腸菌を用いたものであるが、今後、他の菌種でも同様の検討を行いたいと考えている。特に、真菌感染は診断が困難な場合も多く、感度の良い診断法が待たれており、アルペルギルスなどによる呼吸器感染の画像化を目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
備品の購入の必要はなく、予定はない。本研究は分子プローブである、FAGの合成が重要であり、FAGの合成の費用に当てる。また、FAGの取りこみを見るための感染動物や感染させる細菌や真菌などの標準株の使用に主に当てる。平成23年度分の研究費が残ってしまった理由は、東日本大震災の影響により予算執行の目処が遅れたことと、大震災によりFAGの合成を担当しているミゲルが母国キューバに一時帰国をしたことの2点により実験開始が遅れたことによる。
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