本研究の目的は、真菌・細菌に対する分子標的技術を用いて、生体内の感染巣をPET(Positron Emission Tomography)により画像化(イメージング)することである。 そのため、真菌・細菌に特異的に取り込まれる分子イメージング剤として、N-[18F]Fluoroacetyl-Dglucosamine(18F-GlcNAc:FAG)を合成した。このFAGにより、細菌を感染させたラットをPET撮影することにより、感染巣を画像化できるかを検討した。 具体的には、ラットの右肩に大腸菌を接種し、感染ラットを作製した。コントロールとして左肩にテレピン油を接種し、非感染性の炎症巣を起こした。この同一ラットに対して、FDGとFAGとを一日あけて撮影した。その結果、FDGは両方に取り込まれたが、FAGは感染巣に取り込まれ、FAGは感染巣に特異的であった。これらの結果は、Nucl Med Biol 2011; 38(6).807-17.に発表した。 感染ラットに対して、抗生物質を投与し治癒過程のPET撮影を行い、感染巣のstandardized uptake values (SUV)の変化を経時的に検討することを試みた。具体的には、ラット右肩に大腸菌を接種した感染ラットに、FAGにて感染巣への集積を確認後、抗生物質を腹腔内投与による治療を開始し、2日後、6日後、にPET撮影を行い、感染巣のFAGの取りこみの経時変化を調べた。感染巣における[18F]FAGの取りこみは定量化し、平均値を用いて、全ての関心領域(感染巣)をSUVに変換した。その結果、抗生物質に反応して、FAGの取りこみは減少し、生体内での抗生物質の治療効果を画像的に認めることができた。 さらに、FAG合成のための先駆物質を新たに二種類合成した。これによりFAGの収率が改善でき、FAG-PETの利用が容易になると考えられる。
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