研究概要 |
前年度までに確定した条件で、宿主への感染中の細菌の遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析できる IVET-IP (In vivo-expressed tag immunoprecipitation)法を実施し、ラット気道に感染した気管支敗血症菌において発現される遺伝子の検出を試みた。それぞれ、感染1日、3日、9日、15日、30日目における遺伝子発現量を解析した。既知の病原性遺伝子群発現の経時変化に注目したところ,付着遺伝子fhaB,III型分泌機構関連遺伝子群(btrS, bopN, bopC)の感染中の恒常的な発現,付着遺伝子fim2の一過的な発現抑制と毒素遺伝子cyaAの一過的な発現誘導などが観察された。さらに感染期間を通じて発現量が2倍以上増加する289の遺伝子領域を見出した。これらのうち28領域が気管支敗血症菌に特有の遺伝子領域であった。28領域に存在する遺伝子の推定機能を調べたところ、6領域が転写関連因子、10領域が酵素、4領域が菌体外タンパク質、1領域が鉄利用関連遺伝子、7領域が不明であった。百日咳菌に存在せず、気管支敗血症菌感染時に特異的に発現上昇するこれらの領域の中に、気管支敗血症菌と百日咳菌の宿主特異性や病態の違いに関係する遺伝子が存在すると考えられる。また、感染期間中を通じて高度に発現する遺伝子のうち、気管支敗血症菌のみならず百日咳菌やパラ百日咳菌にも共通に存在する遺伝子がコードするタンパク質の中に、三菌種で共通に有用な防御抗原の候補の存在することが考えられた。
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