研究課題/領域番号 |
23659225
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
池 郁生 独立行政法人理化学研究所, 実験動物開発室, 専任研究員 (40183157)
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研究分担者 |
小久保 年章 独立行政法人放射線医学総合研究所, 研究基盤センター, 課長 (10425663)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | CARバチルス / 肺炎病原菌 / 間質性肺炎 / マウス / ゲノムシークエンシング / 培養 / 感染 / 細胞付着機構 |
研究概要 |
マウス・ラットの肺炎病原菌CARバチルスは、純培養ができず増殖や感染の機構は不明である。我々は本菌をVero E6など数種の培養細胞に加えてin vitro感染系を確立した。本菌は培養顕微鏡下で視認可能な大きさとなって培養細胞に付着・増殖するが、この様態は位相差顕鏡で容易に観察可能で、4週間4ステージにわたる菌増殖、細胞への付着と増殖、そして細胞及び菌の死をリアルタイムに確認することができる。本研究ではこの系を用いてこの寄生性細菌が上皮細胞に付着する機構を明らかにするために、定着に必要な細菌側の分子候補を探し出すことを目的とした。 本菌のゲノム情報は、16S rRNA遺伝子配列以外、全く知られていなかったため、平成24年度はまず本菌のゲノムシークエンスを行なった。当初は培養細胞上で増殖した菌からゲノムDNAを抽出する予定であったが、細胞培養上清を使って同菌を培養細胞なしに単独で10<8>/mlまで増殖させる条件を見つけ出し、培養細胞のゲノムDNAの混入のない高純度のゲノムDNAを抽出することができた。ゲノムシークエンシングは東京大学新領域創生科学研究科オーミクス情報センターの服部正平教授との共同研究の下、Roche社の454 GS FLX+を用いて、全長1,435,797塩基のドラフトシークエンスを得ることができた。 いままでに分かった本菌のゲノムの特徴は、1.既知遺伝子とのblastpの値が極めて低いこと、2.ゲノムが小さいこと、3.鞭毛遺伝子が見当たらないことなどである。現在、ギャップ部位のシークエンシングや低クオリティ部位の再シークエンスなどを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CARバチルスの単独培養系を確立することができ、高純度の同菌ゲノムDNAを抽出し、全ゲノムのドラフトシークエンシングを既に終え、平成23年度の目標をクリアしているため。補完的な部分塩基配列のシークエンシングも進行中で、2012年5月には完全長ゲノムシークエンスが判明する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
CARバチルスは、16S rRNA遺伝子配列解析から推定されたのと同様、ゲノムDNAのblastp解析からも、類縁菌のゲノム情報がほとんど調べられていない未知の肺炎菌であることがわかった。ドラフトの段階ではあるが、CARバチルスが属すると考えられるCytophaga-FlavobacteriumグループのFlavobacterium johnsoniaeで報告されている滑走機構に関わる遺伝子群と類似性がある遺伝子も存在しないようである。我々の系で全く新しい付着・運動機構が見出せる可能性は高い。本年度は本菌のトランスクリプトーム解析を行ない、発現遺伝子から本菌の機能分子を探って行きたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り、平成24年度は、培養細胞に感染させたCARバチルスが細胞表面上に密生している時点などを顕微鏡下で確認し、各感染ステージに応じたポイントで細胞ごと菌を回収し、細胞と菌の双方の遺伝子発現ライブラリをRNA-seqキット(ABI社)を使用して作製する。その際、BARコードタグを行ない、SOLiD 3.5(ABI社)にてシークエンシング後、発現遺伝子を解析する。菌で発現している遺伝子について、感染ステージを追ってリアルタイムPCR等で発現をバリデートする。研究費は菌の培養細胞感染の観察に必要な培養器や培地類の購入、遺伝子発現解析に必要な分子生物学試薬類の購入、菌の感染状態確認のための形態観察経費(電子顕微鏡サンプル外注を含む)、および研究発表に関する経費などに使用する。
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