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2011 年度 実施状況報告書

ウイルス増殖阻害活性を有する新たな宿主因子群の解析

研究課題

研究課題/領域番号 23659231
研究機関大阪大学

研究代表者

齊藤 達哉  大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (60456936)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードウイルス / 感染防御応答 / I型インターフェロン / RNA
研究概要

宿主細胞内に侵入したRNAウイルスは、ウイルスゲノムを認識する自然免疫機構により排除される。インフルエンザウイルスやC型肝炎ウイルスなど様々なRNAウイルスに対しては、Rig-like receptor (RLR)がI型インターフェロンやインターフェロン誘導性遺伝子の発現を誘導することで深く関わっている。しかしながら、ガンマレトロウイルスであるMurine leukemia virus (MLV)の感染時に、どのような核酸認識機構が感染防御に関わっているのかについては不明な点が多い。我々は、Zinc finger antiviral protein (ZAP)がガンマレトロウイルスに対する感染防御応答に重要な役割を果たしていることを見出したので、ここに報告する。他のRNAウイルスとは大きく異なり、MLVやXMRVはI型インターフェロンの産生を全く誘導しない。また、I型インターフェロン産生に必須の転写因子IRF3/IRF7は、マウス繊維芽細胞においてMLVの増殖に影響を与えない。一方で、RNA結合因子であるZAPの過剰発現はMLVとXMRVの増殖を強力に抑制し、さらにZAPの減少はこれらのウイルスの増殖を促進する。ZAPは、抗ウイルス活性に必須のRNA結合領域を介して顆粒状のP-bodies様構造体に存在しており、この構造体がガンマレトロウイルスの増殖に関わっていることが示唆される。マウスZAPの欠損はRLRを含めた核酸認識受容体を介したI型インターフェロンの産生に影響を与えず、またRLRの欠損はマウス繊維芽細胞におけるMLVの増殖に影響を与えない。これらの研究結果から、ガンマレトロウイルスに対する感染防御応答は、RLRやI型インターフェロンとは全く異なる機構を介して、RNA結合因子であるZAPにより制御されていることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)多種のRNAウイルスに対する感染防御を担っていることで知られるRLRが、ガンマレトロウイルスであるMLVに対する感染防御には関わっていないことを明らかにした。(2)ガンマレトロウイルスに対する感染防御には、ZAPが重要な役割を果たしていることを明らかにした。(3)ZAPは、RNA顆粒であるストレス顆粒やP-bodyに存在する因子と共局在することから、これらの構造体がMLVに対する感染防御に関わっていることを明らかにした。(4)ZAPは、RLRを介したインターフェロン応答には関わっていないことを明らかにした。

今後の研究の推進方策

(1)ZAPとよく似たドメインを有するTIPARPとPARP12が、MLVやAlphavirusに対する感染防御応答において果たしている役割を解明する。(2)TIPARPとPARP12の細胞内局在を同定する。(3)現在までに同定されていないZAP, TIPARP, PARP12の標的ウイルスを同定する。(4)ZAP, TIPARP, PARP12が、ウイルスの複製を抑制するメカニズムを解明する。(5)遺伝子改変マウスを用いて、ZAP, TIPARP, PARP12の感染防御応答における役割を生体レベルで解析する。

次年度の研究費の使用計画

研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の使用見込み額と実際の執行額が異なった。未使用額が比較的大きくなったのは、研究計画の中で実験を行う順序を入れ替えたために、作製する予定であった抗体の発注が次年度にずれ込んだことによる。しかしながら、実験を行う順序は変更されたものの解析する研究項目に変更はなく、当初予定していた研究課題の解明を引き続き目指していく。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Novel bacterial lipoprotein structures conserved in low-GC content Gram-positive bacteria are recognized by Toll-like receptor 2.2012

    • 著者名/発表者名
      Kurokawa K, Ryu KH, Ichikawa R, Masuda A, Kim MS, Lee H, Chae JH, Shimizu T, Saitoh T, Kuwano K, Akira S, Dohmae N, Nakayama H, Lee BL.
    • 雑誌名

      J Biol Chem.

      巻: 287 ページ: 13170-13181

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 自然免疫におけるオートファジーの役割.2012

    • 著者名/発表者名
      齊藤達哉
    • 雑誌名

      炎症と免疫

      巻: 20 ページ: 49-54

  • [雑誌論文] The IκB kinase complex regulates the stability of cytokine-encoding mRNA induced by TLR-IL-1R by controlling degradation of regnase-1.2011

    • 著者名/発表者名
      Iwasaki H, Takeuchi O, Teraguchi S, Matsushita K, Uehata T, Kuniyoshi K, Satoh T, Saitoh T, Matsushita M, Standley DM, Akira S.
    • 雑誌名

      Nat Immunol.

      巻: 12 ページ: 1167-1175

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The LC3 recruitment mechanism is separate from Atg9L1-dependent membrane formation in the autophagic response against Salmonella.2011

    • 著者名/発表者名
      Kageyama S, Omori H, Saitoh T, Sone T, Guan JL, Akira S, Imamoto F, Noda T, Yoshimori T.
    • 雑誌名

      Mol Biol Cell.

      巻: 22 ページ: 2290-2300

    • 査読あり
  • [雑誌論文] オートファジーとインフラマソーム.2011

    • 著者名/発表者名
      齊藤達哉、審良静男.
    • 雑誌名

      生体の科学

      巻: 62 ページ: 237-244

  • [学会発表] チューブリン重合阻害剤はNALP3インフラマソームの活性化を抑制する.2012

    • 著者名/発表者名
      齊藤達哉、三澤拓馬、審良静男.
    • 学会等名
      日本薬学会第132年会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2012年3月29日.
  • [学会発表] Antiviral Protein Viperin Promotes Lipid Body-Mediated TLR7/9-Induced Production of Type I IFN by Plasmacytoid Dendritic Cells.2011

    • 著者名/発表者名
      齊藤達哉、審良静男.
    • 学会等名
      第63回日本細胞生物学会年会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2011年6月28-29日.
  • [学会発表] 好中球はNeutrophil extracellular trapsによりHuman immunodeficiency virus-1を排除する.2011

    • 著者名/発表者名
      齊藤達哉、駒野 淳、斎藤 愛記、山岡 昇司、山本 直樹、審良静男.
    • 学会等名
      第34回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2011年12月14日.
  • [学会発表] Identification of a novel antiviral response to HIV-1.

    • 著者名/発表者名
      Saitoh T, Akira S.
    • 学会等名
      The International Union of Microbiological Societies (IUMS) 2011 Congress
    • 発表場所
      Sapporo, Japan
    • 年月日
      Sep.13, 2011.

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公開日: 2013-07-10  

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