宿主の細胞はRNAウイルスの特徴的なRNAをパターン認識受容体により感知し、自然免疫応答を誘導する。マウス白血病ウイルス(MLV)は、宿主であるマウスに感染して腫瘍形成を引き起こすレトロウイルスである。一本鎖RNAを感知するパターン認識受容体であるToll-like receptor 7 (TLR7)は細胞外部のMLVのゲノムRNAを認識して自然免疫応答を誘導することが、近年明らかになっている。しかしながら、細胞質内に進入したMLVゲノムRNAを感知するパターン認識受容体に関しては不明な点が多かった。二本鎖RNAを感知するパターン認識受容体であるRig-I-like receptors (RLR)は細胞質内に進入したRNAウイルスを認識してI型インターフェロンを介した抗ウイルス応答を促進するが、細胞質内に進入したMLVに対する感染防御には関わっていなかった。そこで他のRNAセンサーについて解析を進め、Zinc finger Antiviral Protein (ZAP)が細胞質内に進入したMLVゲノムを感知し、RNA分解機構であるエキソソームを介してMLVゲノムの分解を誘導することを見出した。ZAPを欠損したマウス繊維芽細胞においてはMLVの増殖が亢進し、一方でZAPを過剰発現した細胞においてはMLVの増殖が抑制された。ZAPは、自身のCCCH型Zinc fingerドメインを介して、P-bodyやストレス顆粒のマーカータンパク質が集まるRNA顆粒に局在した。ZAPは、MLVゲノムRNAやエキソソーム構成因子をこのRNA顆粒へ引き寄せることで、MLVゲノムの分解を誘導すると考えられた。以上から、ZAPは細胞質内に進入したRNAウイルスを感知するパターン認識受容体であり、TLRやRLRの認識から逃れたウイルスの排除を行う役割を担うことが明らかとなった(投稿準備中)。
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