平成23年度は、PVに結合するマウス血管内皮細胞の表面分子はトランスフェリン受容体であることを明らかにし、さらに、in vitro におけるPVとトランスフェリン受容体の結合についての研究は順調に進んでいた。すなわち、トランスフェリン受容体上のPV結合に関係するペプチド(9アミノ酸)を同定し、さらにPV粒子上のキャプシド蛋白質VP1上のペプチド(13アミノ酸)であることを証明した。また、PV粒子上のペプチドを結合させたマーカー分子は、血管内皮細胞に取り込まれることまで証明し、さらなる研究進展を企画していた。 ところが、平成24年度に入り、使用しているPV抗体を、ウサギhyperimmune血清から精製抗体に替え、PVとトランスフェリン受容体との免疫沈降実験を行ったところ、トランスフェリン受容体は非常に沈降しづらくなり、マウス血管内皮細胞にトランスフェリン受容体を過剰発現させたときのみ検出可能であった。すなわちPVとマウス血管内皮細胞上のトランスフェリン受容体の親和性はかなり低いことになる。このことが、真実であるとすると、これまでの実験結果は見直しが必要となる。ただし、in vitro では非常に効率の良い結合が見られるので、今年度見出した意外な結果の真相を明らかにするための努力が続いている。 この点をクリアーしないと先に進めないので、使用抗体を替えたことによる実験結果への影響と、もしトランスフェリン受容体でなかった場合、受容体が何であるかを明らかにする研究を続けてている。
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