研究概要 |
特殊環状ペプチド(No. 24)のインフルエンザウイルスの増殖阻害活性の作用機序の解析を進めた。本研究で開発した特殊環状ペプチドは、インフルエンザウイルスの粒子表面のHAタンパク質に結合するため、その作用機序としてはウイルス生活環においてHAが関与するステップ(HAの開裂、細胞への吸着、ウイルス膜と細胞膜との融合、ウイルス粒子形成、出芽)であると想定され、これまでに中和活性を示すデータを得ている。そこで、まずNo. 24ペプチドのHAの結合部位を同定するため、H5N1のVac-3株とH1N1のPR8株をNo. 24ペプチドと反応させ、それぞれ20 μM, 0.1 μMで増殖してくる変異ウイルス(エスケープミュータント)を単離した。これらのウイルスのHA配列を解析したところ、Vac-3株のエスケープミュータントではHA遺伝子に変異は検出されていないが(PA, NA遺伝子上にはアミノ酸置換を伴う変異が見出された)、PR8株のエスケープミュータントではHA遺伝子に2箇所のアミノ酸置換変異(E232G, L345I)を見出した。 特殊環状ペプチド(No. 24)のインフルエンザウイルス増殖阻害の作用機序は、HA結合を介したウイルス粒子の中和活性(細胞への吸着阻害)に加え、細胞内での侵入に必須のステップ(HAによる膜融合)を阻害する活性を有することが明らかとなった。また、ウイルス侵入以降のステップにも作用する可能性も示唆された。さらに、インフルエンザウイルス感染動物モデルを用いて特殊環状ペプチドの感染防御効果及び治療効果について検討していく。
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