研究課題/領域番号 |
23659239
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
徳久 剛史 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20134364)
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研究分担者 |
有馬 雅史 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00202763)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 体細胞超突然変異 / Bリンパ球 / 胚中心 / サイトカイン / クラススイッチ |
研究概要 |
高親和性IgGメモリーB細胞は、胚中心内でActivation induced cytidine deaminase (AID)を強発現して抗体遺伝子V領域において体細胞超突然変異(Somatic Hypermutation: SHM)を導入しかつIgGへクラススイッチした胚中心B細胞の中から、高親和性IgG抗体を発現する細胞が選択されて分化する。このSHMの導入機序に関して、AIDによるC/G塩基の変異を介した導入機序が示唆されているが、A/T塩基への変異導入機序については不明である。申請者らはすでに、BCL6-KOマウスの成熟B細胞を活性化してIgG1へクラススイッチを誘導したところ、抗体遺伝子のスイッチ領域やc-Myc遺伝子でAdenine(A)からGuanine(G)へのDNA突然変異の頻度が異常に上昇していることを見出し、かつRNA修飾酵素でAdenosine deaminase活性をもつAdenosine deaminase acting on RNA1(ADAR1)の発現がBCL6-KOの活性化B細胞において亢進していることを見出した。そこで本研究は、RNA修飾酵素である ADAR1による胚中心B細胞での抗体遺伝子V領域におけるA/T塩基へのSHM導入機序をADAR1遺伝子改変(トランスジェニック:Lckd-ADAR1-Tgや欠損:ADAR1-KO)マウスを用いて明らかにする。 平成23年度は、Lckd-ADAR1-Tgマウスを抗原NP-CGとアジュバント(Alum)で免疫して、7日目と14日目における脾臓由来のIgG1陽性の胚中心B(Fas+, GL7+)細胞の抗体遺伝子V領域(VH186.2)の遺伝子解析を行いSHMの頻度とA/T変異の頻度を解析する。その結果、TgマウスにおいてSHMの頻度とA/T変異の頻度の上昇がみられることをみいだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度では、ADAR1の過剰発現系を用いてADAR1がSHMに関与していることが強く示唆するデータが得たれたことから、初期の研究目的は達成された。次年度には、ADAR1-KOマウスを用いてADAR1のSHMへの関与を証明する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ADAR1の過剰発現系を用いてADAR1のSHMへの関与を強く示唆するデータが得たれたことから、次にADAR1-KOマウスを用いてADAR1のSHMへの関与を証明する予定である。 ADAR1-KOマウスは胎生致死なので、CD21-Cre Tgマウスと交配することによりB細胞におけるコンディショナルのADAR1-KOマウスを作製している。すでに、B細胞でのみADAR1を欠損したADAR1-KOマウスが得られており、現在抗原NP-CGとアジュバント(Alum)で免疫して胚中心B細胞におけるSHMを解析中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ADAR1-KOマウスは胎生致死なので、LoxPの挿入されたADAR1-floxマウス(飼育中)をCD19-Cre-Tgマウス(飼育中)やCD21-Cre-Tgマウス(飼育中)と交配することにより成熟B細胞でコンディショナルにADAR1を欠損した(ADAR1-cKO)マウスを作製する。このマウスを用いて以下のように研究をすすめる。(1)ADAR1-cKOマウス脾臓由来の成熟B細胞を抗IgM抗体と抗CD40抗体と様々な濃度のIL-4で刺激して経時的にIgG1陽性B細胞の分化をFACSで解析し、正常成熟B細胞の分化と比較する。(2)上記(1)のIgG1陽性B細胞をFACSで分取した後、抗体遺伝子のスイッチ領域やc-Myc遺伝子のDNA突然変異の頻度とA/T変異の頻度を正常IgG1陽性B細胞における頻度と比較解析する。(3)ADAR1-cKOマウスを抗原NP-CGとアジュバント(Alum)で免疫して、経時的に採血して血中IgMやIgG1抗NP抗体価を親和性とともに測定する。(4)上記(3)のマウスの免疫後7日目と14日目における脾臓由来のIgG1陽性の胚中心B細胞をIgG1、FasやGL7に対する抗体と反応させてFACSで分取する。これらの胚中心B細胞の抗体遺伝子V領域(VH186.2)の遺伝子解析を行いSHMの頻度とA/T変異の頻度を正常マウスからの胚中心B細胞における頻度と比較解析する。
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