研究課題/領域番号 |
23659241
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
大東 いずみ 徳島大学, 疾患ゲノム研究センター, 特任助教 (00596588)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 胸腺髄質上皮細胞 / 自己免疫寛容性 |
研究概要 |
胸腺髄質上皮細胞は、組織特異的自己抗原を含め末梢組織に存在する自己抗原を発現し、成熟過程にあるTリンパ球に提示することによって自己反応性細胞の排除や制御性T細胞の生成をもたらし、自己免疫寛容性の獲得に重要である。我々は、自己免疫疾患治療法の開発を目的とし、末梢自己反応性Tリンパ球のアフェレシスを可能とする胸腺髄質上皮細胞を用いた人工免疫器官の構築を試みた。 細胞と接着することで組織構造を構築しうる細胞外マトリックスの構造を模倣した足場としてコラーゲンスポンジを用い、野生型マウス胸腺より単離した髄質上皮細胞、胸腺髄質上皮細胞増殖因子であるRANKLを過剰発現させたマウス胸腺間葉系細胞由来Tst4細胞と胸腺髄質上皮細胞との混合細胞、および、上皮細胞を含む胸腺ストローマ細胞をコラーゲンスポンジに播種し、腎臓被膜下に移植した。移植3週間後、移植片をヘマトキシリン-エオシン染色したところ、移植片に細胞の集合が確認された。しかし、移植細胞をフローサイトメーターで解析したところ、上皮細胞マーカーであるCD326陽性細胞は検出されたが、胸腺髄質上皮細胞マーカーであるUEA1は陰性であった。また、移植細胞からmRNAを抽出し、CD326および、胸腺髄質上皮細胞特異的に発現し、自己寛容の確立に関与する転写因子であるAireの発現を調べたところ、CD326の発現は検出されるものの、胸腺から単離したばかりの胸腺髄質上皮細胞での発現と比較すると発現が低下しており、さらに、Aireの発現は検出されなかった。また、コラーゲンスポンジの代わりとして、アルギネートを用いて同様の実験をおこなったが、胸腺器官様構造は形成されなかった。これらの結果から、コラーゲンスポンジやアルギネートなどの生体材料は、機能的な胸腺髄質上皮細胞の増殖および維持に適していないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
胸腺髄質上皮細胞と接着することで組織構造を構築しうる細胞外マトリックスの構造を模倣した足場として、数種類のコラーゲンスポンジおよびアルギネートを用い、人工胸腺が構築しうるかどうかを検討した。そのうち、コラーゲンスポンジの1種で、細胞の集合が確認されたが、機能的な髄質上皮細胞は維持していなかった。したがって、今年度の研究計画である胸腺髄質人工器官の構築が成功しておらず、目的の達成がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、胸腺上皮細胞の細胞株の樹立を試みており、培養上皮細胞を凝集させることにより、器官様構造を形成できることが明らかになりつつある。そこで、培養細胞から髄質上皮細胞を単離し、細胞の凝集により胸腺様器官の構築を試みる。また、申請書に記載している次年度の計画の通り、胸腺髄質上皮細胞の増殖因子を用いて、胸腺髄質人工器官の構築技術の向上を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度への繰越金329822円のうち328975円は、3月に発注した物品費であり、4月に支払いが行われる予定であるため、平成23年度分としてすでに執行を終えている。平成24年度は、平成23年度の胸腺髄質人工器官の構築技術を発展させ、自己免疫疾患治療法開発への挑戦をおこなっていく。そのために必要な実験動物および試薬等の必要な物品を購入する。平成23年度から繰越した847円は、物品費に充当する予定である。また、国内外での免疫学会での学会発表のための旅費を予定している。
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