研究課題
アレルギーになりやすい、なりにくいと言う体質は、遺伝的にプログラムされている。本研究ではIL-4遺伝子の3’側非転写領域に存在する3カ所のSNPsに着目し、SNPをゲノムに遺伝子導入したマウスを作成することで、その生物学的意義を解明していく。IL-4遺伝子の3’側非転写領域 HS4にアトピー患者で多く見られるSNPがあることを見出した。そこで、非アトピータイプSNP ヒトサイレンサーノックインマウスとアトピータイプSNPヒトサイレンサーノックインマウスを確立した。ヒトHS4ノックインマウスについて卵白アルブミン(OVA)特異的免疫反応を解析するため、それぞれのノックインマウスでOVA特異的T細胞抗原受容体(TCR)を持つトランスジェニックマウスを作成してTh2への分化とIL-4産生を測定した。マウスでサイレンサーとして同定されたHS4領域は、ヒトにおいても配列は良く保存されていいた。しかしながら、機能としてはサイレンサー活性を持たないことが、ノックインマウスの解析から明らかにされた。また、アトピータイプSNPを持つノックインマウスは非アトピータイプに比べ、僅かにではあるが高いIL-4産生能を有していることが証明された。この結果より、アトピー患者で認められたサイレンサー領域に存在するSNPは、T細胞におけるIL-4産生を亢進する働きがあることが、マウスの生体を使った機能解析において証明された。
2: おおむね順調に進展している
ヒトSNPsを有するサイレンサー(HS-4)領域ノックインマウスの構築については、マウスの確立に加え、OVA特異的TCRトランスジェニックマウスとの交配、T細胞に対する解析が完了したことから、初年度に計画していた研究の大方の部分は達成された。しかしながら、ヒトSNPsを有するエンハンサー(CNS-2)領域ノックインマウスの構築については、マウスの構築まで至らなかったことが反省材料である。しかしながら、マウスでサイレンサーとして同定されたHS4領域が、ヒトてはサイレンサー活性を持たないこと、またその中でアトピータイプSNP配列が持つ機能的意味が明らかにされたことは、大きな発見であった。
初年度に確立した非アトピータイプSNP ヒトサイレンサーノックインマウスとアトピータイプSNPヒトサイレンサーノックインマウスを用い、IgE抗体産生と喘息モデルを用いた解析を行う。SNPsに関連する転写因子の同定は、この領域にサイレンサー活性が存在しなかったことから、目的を変更し、SNPsに意義を探るための解析を行う。ヒトSNPsを有するエンハンサー(CNS-2)領域ノックインマウスの構築を展開する。確立されたマウスはOVA特異的TCRトランスジェニックマウスと交配することにより、OVA特異的免疫反応におけるSNPsの意義を検討する。
本研究課題を遂行するために必要な消耗品に使用する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (20件)
Nature Medicine
巻: Mar 25;18(4) ページ: 538-46
10.1038/nm.2657
Plos Biology
巻: 10(2) ページ: e1001255
10.1371/journal.pbio.1001255
Immunity
巻: 36(2) ページ: 188-200
10.1016/j.immuni.2012.02.002
J. Immunol.
巻: 188(4) ページ: 1809-1818
10.4049/jimmunol.1101746
EMBO J.
巻: 31(2) ページ: 366-77
10.1038/emboj.2011.388
Plos One
巻: 6(9) ページ: e25538
10.1371/journal.pone.0025538
Nature
巻: 477(7363) ページ: 229-233
Nature Immunology
巻: 12(5) ページ: 450-459
10.1038/ni.2020