免疫系が代謝と何らかの繋がりがあり、協調的に制御されていることが示唆されているが、そのメカニズムは不明である。TNF-aは感染により誘導され、IL-1などの炎症メディエーターの発現やアポトーシスを誘導し、感染防御に関与することが知られている。私達は、TNF-αシグナル伝達経路の下流で機能する因子RIP1のユビキチン化を制御することにより、TNF-aによるアポトーシスを正に制御する新規TRIMタンパク質を同定した。一方、このTRIMはストレス応答性キナーゼp38を活性化し、転写因子ATF-2を活性化することが示された。最近の研究により、低栄養条件下では、肝臟でのATF-2のリン酸化が低下し、コレステロール生成系遺伝子之発現が低下することが分かって来た。そこで、このTRIMノックアウトマウスを作製し、野生型マウスとノックアウトマウスの肝細胞を用いて、発現に差のある遺伝子をアレイ解析し、約80個の遺伝子発現が上昇していることを見出した。これらの遺伝子の多くが、HMG CoAレダクターゼなどのコレステロール生成系遺伝子、アセチリレCoA合成酵素などの脂質生成系の遺伝子であった。以上の結果は、この新規TRIMタンパク質は、TNF-αシグナル伝達経路の下流でアポトーシスを制御して、感染防御に関与すると共に、転写因子ATF-2の活性化を介して、コレステロール代謝系を活性化することが示唆された。このように、免疫系と代謝系を繋ぐ鍵となる因子の機能が明らかにされた。
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