本研究は、在宅医療と介護サービスの質評価として、療養者のQOL、再入院率、在宅療養期間に着目したアウトカム指標による検証を行い、今後の科学的かつ合理的な在宅医療と介護サービスについて検討するための基礎資料を得ることを目的としている。現在、フォローアップしている療養者と主介護者318組のうち、発症から1年目までのデータが揃っている292組(追跡率91.8%)、発症から2年目までのデータが揃っている196組(追跡率61.6%)、発症から3年目までのデータが揃っている156組(追跡率49.1%)について、療養者のQOLと主介護者の介護負担を中心に解析を行った。 療養者のQOLについて、SF-36では在宅療養開始時と脳卒中発症から1年後のQOLで増減はみられなかったが、脳卒中発症から2年目、あるいは3年目では、在宅療養開始時に比べて、一部のドメインについて有意に上昇していた。また、EQ-5DのQOL効用値は在宅療養開始時と脳卒中発症から1年後の変化について有意差はみられず、QOL増減と在宅療養中に受けた医療サービスおよび介護サービスとの関連はみられなかった。脳卒中発症後2年目、3年目のQOL増減と在宅療養中に受けた医療サービスおよび介護サービスの提供量との関連もみられなかった。 家族の介護状況は、在宅療養開始時と比較して1年目では主介護者の年齢や性別に大きな変化はなく、介護時間、介護負担感、QOL効用値、介護継続の意志についても大きな変化はみられなかった。2年目以降では主介護者の女性比率が100%となり、介護時間は増え、介護負担感も増大し、介護継続の意志については在宅療養開始時よりも低下している傾向が示されたが、主介護者のQOL効用値は在宅療養開始時とほぼ変化はみられなかった。 今後も引き続き追加データをもとに再分析を行う予定である。
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