研究課題/領域番号 |
23659252
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研究機関 | 新潟県立大学 |
研究代表者 |
田邊 直仁 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (40270938)
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研究分担者 |
齋藤 玲子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30345524)
木村 義成 大阪市立大学, 文学研究科, 講師 (20570641)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 救急 / 標準化死亡比 / 心血管疾患 / 地理情報システム(GIS) |
研究概要 |
新潟県新潟市における平成19年4月~平成20年3月の救急隊出動事例(40歳以上)445,769件の発生場所(町丁目レベル),出動救急ステーション,搬送先医療機関の所在地の住所をジオコーディングし,地理座標をArcGISを用いて地図化した。さらに,通報時刻,現場到着時刻,搬送先到着時刻,救急隊所要時間(通報から搬送先到着まで)をデータベース化した。 所要時間を新潟市の区役所・出張所管轄地区(22地区)毎に集計して平均救急隊所要時間を算出した。平均救急隊所要時間の長さによって22地区を各群の人数がほぼ同数になるように4群に分類した。公表されている平成18~19年の人口動態統計を用いて各地区群の総死亡および死因別SMRを計算し,平均所要時間との関連を検討した。その結果,平均救急隊所要時間が長い地区群ほど総死亡,全循環器疾患,脳梗塞,出血性脳卒中,心不全のSMRが高くなり,不整脈のSMRが低くなる傾向がみられた。一方,がんSMRは平均救急隊所要時間と明確な関連を認めなかった。 さらに新潟市内において急性心筋梗塞と脳卒中の急性期治療を担当している主要病院各8施設,9施設を仮想搬送先として設定し,各発生場所から直近の急性期治療担当病院まで搬送する推定救急隊所要時間を計算した。脳卒中,急性心筋梗塞各々に対する推定救急隊所要時間平均値から22地区を4群に分類し,脳卒中および急性心筋梗塞のSMRとの関係を検討した。脳卒中の推定救急隊所要時間が長くなるほど,脳梗塞,出血性脳卒中のSMRが高くなる傾向が見られた。一方,急性心筋梗塞の推定救急隊所要時間と急性心筋梗塞SMRの間には明確な関連は認めなかった。 救急隊所要時間は各地区における救急医療体制の充実度を反映していると考えられる。救急隊医療体制の充実度に課題がある地区では脳卒中と心不全による死亡リスクが高い可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は「救急搬送データのデータベース化」および「救急隊所要時間と死因別SMR との関連性の検討」を計画しており,救急隊所要時間は「全搬送先への所要時間」,「脳卒中救急を主に担当している9 病院への推定所要時間」,「急性心筋梗塞の急性期治療を主に担当している8 病院への推定所要時間」の3パターンを予定していた。いずれも年度中に終了しており,概ね予定通りの達成と考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は「救急体制変更による死亡率改善効果のシミュレーション」を計画している。まず平成23年度に行った分析をもとに地区の救急隊所要時間から死亡リスクを推定するモデルを作成する。この推定モデルを利用して,救急隊ステーションの移設や,脳卒中の急性期治療担当病院の新設などによって,脳卒中の死亡リスクが高い地区の死亡リスクをどの程度軽減できるかシミュレーションを行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
統計分析に用いるソフトの更新や,GIS関連ソフトの購入,研究者間の研究打ち合わせ旅費,研究成果の発表旅費,および研究者間の通信費に使用する予定である。
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